万博控え続々と開業するホテル、「調理師求ム」…普通科卒の高校生採用や繁忙期のスポット派遣で対応も
来年の大阪・関西万博を控え、関西のホテルで調理を担う人材が不足し、レストランの営業に影響が出ている。背景にはコロナ禍で離職した従業員が戻らないことに加え、訪日外国人客の増加や調理師のなり手不足の影響もある。人材確保に向け、採用の対象を広げたり、派遣サービスを利用したりする動きもある。(前川和弘、南部さやか) 【図表】訪日外国人客数の推移
基本から
大阪市北区のリーガロイヤルホテル大阪では10月中旬、普通科高校をこの春に卒業して入社した社員らが、宴会用の料理を担当するシェフからキウイなど果物の切り方について指導を受けていた。
松江市の私立高校を卒業した社員(19)は料理が好きで採用に応募した。立ち姿勢や包丁の扱い方といった基本から学んでいるといい、「シェフが丁寧に指導してくれるので楽しい」と話す。
運営会社によると、調理部門の人手不足に対応するため、今年4月以降、調理を専門に学んだ学生に限っていた正社員の採用対象を普通科高校の卒業生にも広げた。入社後は主に宴会用の仕込みや盛りつけから始めるという。
結婚式場や複数のレストランを備える大阪市のホテルは昨年10月から、シェアダイン(東京)が運営する「SPOTCHEF(スポットシェフ)」の活用を始めた。調理師を時間単位でホテルや飲食店に派遣するサービスで、人手不足解消などを目的にシェアダインが昨年7月に開始。今年10月の利用額は前年同月比で10倍に増えたという。
このホテルでは繁忙期や宴会の準備などで利用し、人材を補っている。ホテルの担当者は「必要な時に経験を積んだ料理人に来てもらえる。人件費も抑えられる」と語る。
求人倍率2・85倍
日本政府観光局によると、今年1~10月の訪日外国人客数(推計値)は、3019万2600人となり、過去最速のペースで3000万人を超えた。宿泊需要も高まっており、大阪府が推計した2023年の府内の訪日客の宿泊者数は19年を約80万人上回り、延べ約1875万人となった。来春の万博開幕で訪日客はさらに増えると予想される。