「親がシャブ中で、前科5~10犯なんて人も全国に普通にいます」…「児童養護施設」の闇が向かう先
クローズドで知られざる「児童養護施設」をテーマに…
子どもの絶対数は減っているのに、児童虐待相談件数は増加の一途をたどり、「児童養護施設」への入所理由も虐待やネグレクトが約半数を占める。そのクローズドで知られざる世界をテーマにした漫画『それでも、親を愛する子供たち』(新潮社)は、北九州にある児童養護施設を運営して来た一族の3代目をモデルに描いたという。 【漫画】壮絶…! 「児童養護施設」のリアルを描いた漫画が訴えること 実際の取材はどのように行われたのか。本作の原作者で、日本で初めて説得による「精神障害者移送サービス」を創始し、「(株)トキワ精神保健事務所」を創業した押川剛氏に聞いた。 「私は、園長のモデルでもある3代目のAさんと親しいからといって、彼を持ち上げるための漫画を描くつもりは一切ないんですよ。それも了承してもらって、表に出されたら困ることも、どんどん描いていきます。 Aさんのお父さんは全養協(全国児童養護施設協議会)の副会長を務め、児童福祉法の根幹となる制度も立ちあげ、勲章ももらったことのある有名な方で、Aさん自身も北九州では知らない人がいないくらいの人です。 病識のない対応困難な精神疾患患者とその家族を描いた『「子供を殺してください」という親たち』(新潮社)のときは、出版と同時に嫌がらせや誹謗中傷をかなり受けましたが、今回は嫌がらせどころか、その分野の方々から推薦をいただいているくらいですね。これは、大変な背景を持つ子どもたちを365日受け入れる人たちならではのカルチャーかなと思いました。 児童福祉の分野に関しても、国は小規模化や地域分散化を推進しています。だからこそ、現場で起きていることを一般の方々も知る必要がある。それも漫画を始めた動機の一つです。そういった社会に訴えかける必然性がなければ、こんなにも真実を赤裸々に描いた漫画を出版社が出せないですよ」 「施設の近くに事務所を移すぐらいの勢い」と話す押川氏が、取材を進める上でベースにしている施設は2つ。施設で取材しつつ、北九州市の子ども総合センター(児童相談所)の担当者や、地域で長年、社会的養護に携わる方々と意見交換する機会も多いという。 「Aさんは伝統のある児童養護施設を運営してきた一族の3代目で、専門家や行政の介在じゃないからこそ、できる話が多いんです。彼自身、施設の敷地内に実家があり、そこで育ってきたわけですから。かつて施設で暮らしていて、『兄ちゃんのこと思い出したから、遊びに来た』と言って来る元入所者も少なくありません。 Aさんも子どもの頃は、施設で暮らす同級生と同じ公立の学校に通っていました。以前、『そういう生活が嫌じゃなかったのか』と聞いたところ、『むしろ、なんで自分だけが別の家に住んでるんだ。なんで施設にいる子たちと同じところに俺は寝泊まりできないのか』と、悲しくて悲しくてしょうがなかったと言っていました。施設の中に職員たちもいて、みんな一つの家族として組み込まれていたんですね」