「親がシャブ中で、前科5~10犯なんて人も全国に普通にいます」…「児童養護施設」の闇が向かう先
「出身者や職員は『これはすごくベーシックな、ありがちなやつですよね』と言います」
非常にリアルな描写の多い本作だが、児童養護施設出身者や職員など、関係者からの反響は? 「この世界を知らない人は『子どもがかわいそうで涙が出る』『切ないです』などと言いますが、出身者や職員などは『これはすごくベーシックな、ありがちなやつですよね』という反応です。 皆さん、なかなか想像できないでしょうけど、親がシャブ中で、前科5犯、6犯、7犯、10犯なんて人も、全国に普通にいます。 ただ、漫画で描けなかった事実が1個あって。それは薬物依存症の親から生まれた子どもが障がいを持っていることが多いということです。私はたくさんの薬物依存症の方に携わってきた経験から、職員さんに『子どもたちにこういうところ、ありませんか』と具体的な質問をぶつけていくと、『あ、確かにありました。目玉が左右に揺れる、眼振のある子が時々います』と言います」 なぜそうした描写を、漫画には入れなかったかについてはこう説明する。 「児童養護施設がどういうものかを皆さん知らないので、それをきちんと見せることが重要だったからです。 他の施設に取材をしても、子どもの頭がちょっと歪んでいた、眼振や斜視など目に異常があるという2つのケースが多いようですが、絵にするとインパクトがすごいじゃないですか。その要素だけに注目されると、児童養護施設の実情が伝わらなくなってしまいますから」 ◆もともと表に見えない「児童養護」問題が、国策でさらに見えない状況に… さらに、もともとクローズドで表に見えない児童養護施設の問題が、今、国策として「地域移行」「小規模化」が進み、さらに見えない状況になってきていると押川氏は警鐘を鳴らす。 「家族の問題は地域で解決してくれという流れに変わったんですね。例えば、私が長らく携わってきた精神疾患の患者さんも、どんどん病院から退院させて基本は在宅、難しければ地域の『グループホーム』に住まわせ、訪問看護や就労継続支援、介護支援などを利用しながら地域共生社会を送る流れになっていますが、それと同じです。 児童養護施設も、昔ながらの大規模施設ではなく、地域にある空き家を借りて、そこに性別が同じ児童を4~5人住ませて、職員が最低1~2人つき、24時間365日家庭のようにして過ごすようになっています。 この国の解決方法は、地域に放り込んで、『自分たちで家族になって解決しろ』と言っているのかな、と思うんですよ。そのため、児童養護施設は今後、地域との折衷役も求められ、少数精鋭で職員の質を上げる必要があります。職員の配置も難しいところで、基本的に男子のホームには男性職員が、女子のホームには女性職員が付くことになります。こうなると、何が家庭的養護か。母子家庭的、父子家庭的養護じゃないですか? とも思います」