「親がシャブ中で、前科5~10犯なんて人も全国に普通にいます」…「児童養護施設」の闇が向かう先
精神障害者のグループホームで言えば、医療観察法による通院処遇の人のためのグループホームは、東京都内では近隣に公表されずに開設されている。 「私も、専門家が集まる会議に参加しましたが、『首都圏のような人が密集している地域で、自傷他害行為などの問題が起きたら、どうするんですか』といった意見がかなり出ていました。『そのときは24時間365日体制の看護師が飛んでいきますから、今のところは大丈夫です』と言うんです。 その地域は、本来なら300床レベルの精神科病院が2つなければいけないのに、病院がない代わりにグループホームをいっぱい作っているわけです。 でも現実には、入所者が近隣トラブルを起こして110番通報され、措置入院を何十回も繰り返した結果、ようやく落ち着いて地域定着できた方もいる、という話もありました。当事者側からみれば美談でも、近隣の方にとってはなかなか大変な話ですよね。 児童養護施設にも言えることですが、地域共生のためには、問題が起きたときの対応策や責任の所在を明確にする必要があります。そうしないと、地域住民の理解も進みません。 例えば北九州市以外の児童養護施設にも取材しましたが、小規模化のグループホーム用の物件探しの段階で、『もし、施設に入っている子どもと孫が付き合って、子どもができたらどうするんだ。そんなのは受け入れられない』という高齢者もいました。それは正直な気持ちでしょうね。 ただ、地域共生社会が国の方針である以上は、そういう実態も含めて多くの人に知ってもらう必要があると思っています。『子どもに罪はない』、これは全世界共通ですから」 一方、施設ではなく里親委託という方法も進んでいるが、そこにも問題があるという。 「養育里親はあくまでも、自治体からの委託で子どもを預かり、養育する制度です。例えば、子どもが問題行動を起こすなどして『もう育てられない』となれば、自治体に返せるわけです。 逆に、どれだけ愛情を持って育てたとしても、虐待していた実の親が子どもを返せと言い出すことがあるし、子どももそうなると、帰りたいと言います。どんな酷い親でも、子どもは親を愛していますから。 では特別養子縁組はどうかというと、日本では海外のように一般的ではありません。以前、海外事情に詳しいジャーナリストが言っていたのは、『アジア圏は血のつながりを何よりも大切にするから、養子縁組は心情的に受け入れがたいのだろう』ということです。自分の籍に入れて、自分たちが全て責任取るなんてことになると、そこにまた問題も出てきますからね」