初任給大幅アップで40万円に! でも、「残業代80時間分を含む」で炎上! 定額働かせ放題!? 固定残業代の闇
「みなし残業」とも呼ばれる固定残業代制度。その多くは30時間程度ともいわれているが、とある企業が過労死ラインギリギリとなる80時間もの固定残業代を設定していることがわかり、SNSを中心に炎上。 【図】「基本給化」する固定残業代ほか では、そもそも固定残業代とはどのように生まれ、運用されてきたのか? そして、その功罪は? 労働法に詳しい渡辺輝人弁護士に話を聞いた。 * * * ■高額初任給の実態は80時間残業が前提? 企業の賃上げニュースが続く中、「新卒採用初任給を一律40万円に」という異例の引き上げを実施した企業が話題となった。アパレルのセレクトショップ「STUDIOUS(ステュディオス)」や完全国産ブランド「UNITED TOKYO」を展開する株式会社TOKYO BASEだ。 なんて景気のいい話! と思いきや、話題となった理由はそれだけではなかった。同社の求人をよく見ると、「80時間分(17万2000円)の固定残業代を含む」とあり、本来の基本給は20万3000円と記載されているのだ。 80時間の時間外労働(残業)は一般に「過労死ライン」とされる。同社は東証プライム上場企業でもあり、コンプライアンスが厳しく求められる時代にもかかわらず、これほど型破りな求人採用を発表したことで、ネットを中心に大いに議論となった。 そもそも「固定残業代」とは何か。それは残業時間の有無にかかわらず、決められた時間分の残業代を固定で支払う制度であり、「みなし残業」という通称でも知られる。 例えば、月20時間の固定残業代が設定されている場合、労働者は月10時間の残業だったとしても、20時間分の残業代が支払われる。効率良く働ければ、残業が少なくとも高い給与が支払われるため、働く側にもメリットのある制度に感じられるだろう。 実際、同社社長の谷正人氏は東洋経済オンラインの取材にこう答えている(※)。 「なぜ固定残業80時間にしたかというと、むしろ残業をもっと減らすため。月に10時間残業しても70時間残業しても給料は同じだから、当然効率のいいほうを選ぶだろうと」 (※)東洋経済オンライン「気鋭アパレル『初任給40万円・残業80時間』の真意」〈〉(4月8日閲覧) また、『週刊プレイボーイ』本誌が残業時間について問い合わせたところ、同社広報から次の回答があった。 「現状、店舗スタッフは平均残業時間10~15時間、本社でも多くて40時間となっております。加えて制度上、弊社では45時間以上の残業が発生した場合、時間超過した本人と上長が話し合いを行ない、上長が改善案を起案、承認の後、改善プランに沿って残業削減のための取り組みを各管理者の責任の下、行なっています」 つまり、同社では80時間もの残業の実態はなく、万が一、長時間の残業が発生した場合も、改善のための仕組みが整っているとの趣旨である。 しかし、この回答に対して、法律の専門家の見解は批判的だ。労働者側の立場で残業代の支払いを巡る係争に多く携わってきた弁護士の渡辺輝人氏は、「今回の件には多くの問題がある」と指摘する。