物質・材料研究機構、「水素環境材料実験棟」が完成。金属材料の耐久性評価に寄与
物質・材料研究機構(NIMS)は28日、液化水素など低温水素環境下で金属片の耐久性を測定できる新たな試験施設が完成したと発表した。鉄やアルミといった金属材料の耐久性評価に活用。試験結果を分析することで、より適切な金属素材を選定しやすくなり、水素用の容器や配管、バルブなど関連機器の安全性を高められる。水素社会の実現に向け、より高機能な材料開発につながるとの期待もある。 茨城県つくば市の研究拠点「桜地区」の構内に「水素環境材料実験棟」=写真=を建設した。水素を安全に利用できる防爆仕様の施設で、液化水素をはじめとする極低温の水素に対応した評価試験機4台や、内容量2万4千リットルの液化水素貯槽を導入した。 今後は2025年度末までに新施設で信頼性の高い正確なデータを安定収集できるかを検証。その上で26年度から各種試験に入る見通しだ。収集データは、水素サプライチェーン(供給網)に関わる重工や鉄鋼・非鉄金属メーカーに提供する予定で、関連機器に用いる金属材料の選定・開発を後押しする。 水素が気体から液体に変わる温度はマイナス253度。新施設は、この低温領域も含め、幅広い試験条件を設定できる特徴がある。計画では、温度域がマイナス約253度~同73度(20~200ケルビン)、圧力域が常圧~10メガパスカルというニーズが高い条件下で試験を実施。従来は困難だった世界初のデータ収集も可能になるという。 ステンレス鋼やアルミ合金を中心に液化水素や水素ガスへの耐性を測定・評価。測定数値を集めたデータベースも構築する方針だ。