Let's☆飲酒で環境保護!奄美大島の海底熟成ワインセラー「tlass SEA CELLAR」の試み
現在はファーストエディションとして、海底熟成ワインを販売しているが、今後はお気に入りのワインを預かり、奄美大島の海へと沈めるセラー事業を主体にするという。
おいしいうえに海の環境保護にもつながる
と、ここまで聞くと、ほかの海底熟成ワインと何が違うの?と思うだろう。 実は「tlass SEA CELLAR」を利用すると、海の環境保護にも貢献することができるのだ。
地球の表面積の約7割を占める海は、大気中のCO2の約3割を吸収している。だが、海が吸収できるCO2は限界を迎えるとも言われている。 大気中に残ったCO2は温暖化を招き、温暖化は魚の生態系を変えていく。近年「魚の獲れる量が減った」「その海域で獲れるはずのない魚が水揚げされるようになった」というのも、温暖化が一因だ。
そこで近年、世界的に推進されているのが「ブルーカーボン」だ。これは海の生態系などに取り込まれる炭素のことを表していて、海草や藻、マングローブ林などが「ブルーカーボン生態系」として注目を集めている。 「tlass SEA CELLAR」では、天井に藻場の育成プレートを設置したワインセラーの外枠をオリジナルで開発。外枠は海底に沈めたまま、内側のワインだけをダイバーが手作業で出し入れするという方法を取ることで、ワインを熟成させながら、藻場を育てることに挑戦している。
「藻場はCO2の吸収以外にも、魚が外敵から身を隠したり卵を産みつけたりする場所で、海の生態系には欠かせないものです。ただ、温暖化の影響やこれまで生息していなかった魚による食害もあって、藻場はどんどん減ってきています。 また、日本は昔から漁業が盛んだったので、あるのが当たり前だと思われていて、あまり藻場について研究をしてこなかったんですね。藻場がなくなって初めて、これまで“どんな種類の海藻が生えていたのかわからない”という状況に気づいたんです。 今回、オリジナルの什器を制作してくれた会社は、採取した海藻を培養して、海へと戻す海藻養殖技術を持っていますので、今後はこの技術を活用して、藻場の増成も行っていきたいと思っています」。 ◇ 「楽しみながら、いかに無意識にサステナブルなアクションをできるか」がコンセプトという「tlass SEA CELLAR」。 仲間と酒を楽しむなら、海の環境保全にもつながるワインを味わってみてはいかがだろうか。 林田順子=取材・文
OCEANS編集部