「糖尿病」の合併症を甘く見てはいけない理由はご存じですか? 日常でできる予防法も医師が解説!
糖尿病を発症した人が注意しなければならないのは合併症。なかには命のリスクにつながるものもあり、治療を成功させるには合併症を徹底的に予防することが欠かせません。糖尿病の合併症はどう予防すべきなのか、「吉田内科クリニック」の吉田先生に教えていただきました。 【イラスト解説】糖尿病が進行した先に待ち受ける“恐ろしい合併症”
糖尿病で気をつけたい合併症
編集部: 「糖尿病は合併症が怖い」という話を耳にします。具体的には、どういった合併症があるのでしょうか? 吉田先生: 糖尿病の三大合併症は、「糖尿病性神経障害」「糖尿病網膜症」「糖尿病性腎症」です。その中でも糖尿病性腎症は、最近大きな問題とされています。糖尿病のために腎臓の機能が低下する状態で「慢性腎臓病(CKD)」と言われ、そのまま進行すると人工透析が必要になることもあるからです。 編集部: ほかにもありますか? 吉田先生: さらに糖尿病による合併症で注意したいのは、「動脈硬化」の進行です。動脈硬化とは文字通り、動脈が厚くなったり、硬くなったりして弾力性が失われた状態のことを言います。動脈硬化が心臓の血管で起きれば、狭心症や心筋梗塞などの心臓血管障害、脳内の血管で起きれば脳出血や脳梗塞などの脳血管障害となり、突然死につながったり、重篤な後遺症を残したりするので注意が必要です。 編集部: なぜ、糖尿病になると動脈硬化が起きるのですか? 吉田先生: 血糖値が乱高下することによって血管が傷ついたり、詰まったりして動脈硬化が起きやすくなるのです。また、糖尿病が発症する背景には肥満のほか、「インスリン抵抗性」があります。これは血糖値を下げる役割のあるインスリンという物質の効きが悪くなることを指し、インスリン抵抗性があると高血圧症や脂質代謝異常の悪化を引き起こし、動脈硬化をさらに悪化させることになるのです。
合併症はどのように防げばいいのか?
編集部: 糖尿病の合併症は、どのようにして防げばいいのでしょうか? 吉田先生: 食後の異常な血糖の上昇を防止して、血糖値の乱高下を防ぐことが最も重要です。正しい血糖コントロールは、糖尿病の人が合併症を起こさないようにするためにも、また、すでに合併症を発症している人が悪化させないためにも最も大切なことです。 編集部: 具体的に、どのようにして血糖コントロールをおこなえばいいのですか? 吉田先生: 食事と運動がカギを握っています。一番気をつけなければいけないのは、炭水化物(糖質)を食べ過ぎないということです。特に白米やパン、白砂糖など、過度に精製された炭水化物を過剰に摂取することは、即血糖値の乱高下につながります。 編集部: そのほかにも、気をつけることはありますか? 吉田先生: 例えば、「ゆっくりよく噛んで食べる」「1日3食規則正しく食べる」「食事は腹八分目にする」などを日常的に継続することが重要です。 編集部: 気をつけるべきポイントがたくさんあるのですね。 吉田先生: それから、味付けの濃いものや食塩の過剰摂取は高血圧にもつながり、動脈硬化のリスクを高めます。こうした食品も摂り過ぎないように気をつけましょう。 編集部: 味付けを薄くしたり、塩分を取りすぎたりしないためには、どうしたらいいのでしょうか? 吉田先生: 普段、私は「ご飯とおかずを一緒に食べず、懐石料理やコース料理のように食事をする」ということを患者さんによく話しています。例えば、懐石料理であれば、つきだし、汁物、天ぷら、刺身などがきて、最後に締めのご飯が運ばれてきます。自宅で食事をするときにもこうしたスタイルを真似すれば、自然とおかずの味付けが薄味になり、食塩の摂取、糖分の摂取も減ります。また、締めに至るまでにお腹がいっぱいになり、ご飯の摂取量が減るというメリットもあります。家庭でもこのような食事法を意識するといいと思います。 編集部: 糖尿病の治療には糖質制限が重要と聞きます。上手に続けるポイントはありますか? 吉田先生: 糖質制限を続ける一例として、「小腹が空いたときに炭水化物以外のものを間食すること」が挙げられます。例えば、私がいつも手元に置いているのは、ナッツ類や、ゆで卵、チーズです。これらはほとんど糖質がゼロなので、どれだけ食べても血糖値が乱高下することはありません。また、食事の20~30分前に間食しておくと空腹感が少なくなるので、食欲のコントロールがしやすく、食べ過ぎを防ぐこともできます。