皇后さまがフランス語で「面白い方法ですね」天皇皇后両陛下が芸術・文化と新たな絆「世界文化賞」受賞者を祝福
天皇皇后両陛下は優れた芸術家に贈られる「第35回高松宮殿下記念世界文化賞」の受賞者らを皇居に招き、懇談されました。 【画像】上皇ご夫妻がプラシド・ドミンゴ氏と懇談も 世界文化賞と皇室のつながり 両陛下の「世界文化賞」受賞者との交流は初めてです。フランス語やポルトガル語も交えた「令和の芸術家との交流」が始まりました。 ◆即位後初の面会 皇室とゆかりの深い「世界文化賞」 20日午前11時過ぎ、両陛下は皇居・宮殿で建築家の坂茂さん、映画監督のアン・リーさんら5人の「世界文化賞」受賞者やアメリカのヒラリー・クリントン元国務長官など国際顧問と初めて面会されました。 世界文化賞は、常陸宮さまが総裁を務める日本美術協会が主催し、昭和天皇の弟・高松宮さまの文化芸術への遺志を受け継ぎ創設された賞で、今年で35回目の節目を迎えました。 前日の19日に行われた授賞式典では常陸宮妃華子さまから受賞者にメダルが贈られました。両陛下は「きのうの祝宴は大変和やかに成功されたそうでおめでとうございます」と祝福されたということです。 ◆皇后さまは仏語で「面白い方法ですね」 両陛下はまず、絵画部門の現代アーティスト、フランスのソフィ・カルさんに歩み寄り、「本当に素晴らしい賞を」と祝福されました。 皇后さまはカルさんとは終始フランス語で会話し、見知らぬ人を題材にして作品にする表現技法について、「面白い方法ですね」などと話されました。 両陛下はパリ五輪の話題も交え、親しく歓談されました。 30年間被災地支援を続けている建築部門の坂茂さんには、避難所でプライバシーを守るために再生紙の紙管で作った間仕切りを取り入れていることなどの説明に熱心に耳を傾け、陛下は「紙で作っているんですね」などと確認されました。 そして、能登半島地震の被災地やウクライナなど、世界各地に通う坂さんを「お体を大切にしてください」と労われたということです。 ◆ポルトガル語で「素晴らしい」クリントン顧問「心がとても温かくなります」 台湾出身の映画監督、アン・リーさんには、映画作りを始めたきっかけやこれまでの作品について尋ね、コロンビアの彫刻家、ドリス・サルセドさんには、ポルトガル語で「素晴らしい」を意味する「maravilhoso(マラビジョーサ)」とお互いに声をかけ合われました。 これまでに大統領夫人として来日した際に何度も面識がある国際顧問のクリントン元国務長官は「両陛下のことを思うと心がとても温かくなります」と思いを伝えました。両陛下は穏やかに微笑み、陛下は「世界文化賞の活動は何年になりますか?」と尋ねられました。 また、イギリスのパッテン国際顧問とは2024年6月のオックスフォード大学訪問時以来の再会を喜ばれていたということです。 予定の時間を大幅に超え、両陛下は約1時間にわたりひとりひとりの芸術活動について丁寧に耳を傾け、親しく歓談されました。 ◆懇談の余韻「特別なお時間」 懇談を終えた受賞者や国際顧問は、とても晴れやかな表情で宿泊先へと戻りました。両陛下が以前、都内で行われたコンサートを鑑賞されているピアニストのマリア・ジョアン・ピレシュさん。小さな手でレパートリーを持つ難しさをどう克服しているかなどについて会話を交わしました。懇談を振り返り、「特別なお時間を頂いてありがとうございます」と深い感謝を周囲に伝えていたということです。 ◆上皇ご夫妻から両陛下へ 芸術家との新たな絆 皇室とゆかりの深い「高松宮殿下記念世界文化賞」。芸術や文化に心を寄せる上皇ご夫妻は、世界各国の世界文化賞の受賞者とおよそ30年間にわたり交流を重ねられました。 アルゼンチンのピアニスト、マルタ・アルゲリッチさんとはコンサートの思い出を、「三大テノール」の一人、スペインのプラシド・ドミンゴさんには東日本大震災発災直後に寄せられた支援への感謝を、フランスを代表する女優、カトリーヌ・ドヌーヴさんには日本の是枝監督の話題を。折々に様々な分野のアーティストと幅広い話題について歓談されていた上皇さまと美智子さまのお姿は今も深く印象に残っています。 そうした交流は大切に両陛下に受け継がれました。台湾の映画監督、アン・リーさんは「優しくて和やかな方だった」とお人柄を振り返っていたそうです。令和の歩みも6年目。両陛下もまた芸術家との間に新たな絆を築かれました。
宮﨑千歳