「知らないおじいさんだと思っていた」歯は全部抜け、すえた臭いが…20年ぶりに再会した“自慢の兄”がまったくの別人になってしまった理由
「これまでどうやって生活していたの?」
大介は食事が落ち着くと、少し安堵の表情を浮かべて、自らの過去を話し始めた。 聞けば大介は、大学卒業後、就職した都心の先物取引会社で、流暢な英語能力を活かして華々しく活躍していた。 27歳の時に1年間研修のため、アメリカのシカゴへ出向の辞令を受ける。帰国後も、国際部に異動となり、めまぐるしく働いていたらしい。 しかし、ある日、仕事上のミスから、会社に大きな損失を出しそうになった。その後、何とか修正できて大損は免れたが、何かにつけて上司が言いがかりをつけるパワハラが始まった。その度に、大介は反論して、何度も言い争った。さらに、直属の部下がミスをしてしまったことも重なり、上司はいつしかアメリカ帰りの優秀な大介のことを目の敵にするようになっていった。 最終的に土下座しろと言われ、あまりの屈辱に耐えきれずに辞表を提出し、会社を飛び出してしまったらしい。 裕子は、そんな兄の告白にただ黙って耳を傾けていた。 「会社を辞めた時には、失業保険も出たんじゃないの?」 「そうかもしれないけど、辞めて落ち込んで何もする気が起きなかった」 「これまでどうやって生活していたの?」 「退職金と貯金だよ」 そのうち失業保険も失効してしまったらしい。 強烈な無力感に襲われ、脱力してしまった大介は、マンションに引きこもるようになっていく。 食事は、スーパーの総菜などで済ませて質素に暮らしていた。そのせいで、何とか貯金で食いつなぐことができた。しかし、歯が抜けたのは栄養失調で、偏った食生活が影響していたに違いなかった。
思えば、大介は、元々内向的な性格だった。そのため、妬みや嫉妬といった人間関係の軋轢が耐えられなかったのだろうと、裕子は感じていた。 心おきなくしゃべれる友人がいたら、何らかのはけ口になったかもしれない。しかし、大介は打ち解け合えるかつての同僚に、自分のほうから食事に誘うなどの連絡を取ることをしなかった。 打ちのめされた大介は、たった1人社会から弾き出され、外部との接点を見失って孤立していく。 マンションから少し歩けば、国道沿いに大介の大好きな本やCDが並ぶブックオフや、大手スーパーがある。たまに自宅で、株の取り引きもしていた。しかし、そのほとんどはヤマが外れ、大損してしまっていた。昼夜逆転の生活をして、家で読書や音楽鑑賞に没頭するようになっていく。
【関連記事】
- 【つづきを読む】「ひょっとして、俺の身体、臭うかな?」家はゴミ屋敷、15年間ずっと無職の兄(55)の生活を立て直したい…20年ぶりに再会した妹の“決心”
- 【もっと読む】「まるで醤油をひっくり返したような…」長女(53)の部屋の入口から液体が垂れていると連絡が…高齢の両親が目の当たりにした“想像を絶する光景”
- 81歳ひとり暮らしの父がラブホテルから救急搬送、いったい誰と…? 息子が驚愕した“老いた親の性生活”
- 「所持金3400万円」「右手指がすべて欠損」兵庫のアパートで孤独死した“謎の女”…取材でわかった身元不明女性の“正体”とは
- 死後1か月の亡骸が残された部屋で発見した2匹の猫…“事件現場清掃人”が明かす「人を殺す部屋」の共通点とは