「知らないおじいさんだと思っていた」歯は全部抜け、すえた臭いが…20年ぶりに再会した“自慢の兄”がまったくの別人になってしまった理由
この20年間で、ただならぬことが起きていた
「実はさぁ、事情があってここ15年ほど無職なんだよね」 ポツリと兄が切り出した。兄がこうなってしまった訳に、裕子は愕然とした。 兄は、裕子の心中の動揺など全く感じていない様子で、「お互い老けたなぁ」と懐かしそうな笑みを浮かべている。よく見ると、兄の歯は、上も下も1本残らずすべてなくなっていた。 しかし、その声とはにかんだ笑顔に、裕子はかすかながら、かつての兄の面影を感じた。「やっぱり兄ちゃんだ」と裕子は少しホッとした。それと同時に兄の身に、この20年間で、ただならぬことが起きていたことを確信した。 裕子はショックを何とか隠して、大きな荷物を置くため、まずは宿泊先のホテルに向かった。大介はホテルに向かう途中、道路脇にあったベンチに「ちょっと休憩」と言って腰を下ろした。その様子から、裕子は兄の体力がだいぶ落ちていることを察した。2人でホテルの部屋に入ると、大介はまずいすに腰かけた。いすに座る時、大介は重い体を下ろすのが大変そうに、「よっこらしょ」と声を上げていた。
兄と向かい合って座ると、どこからか、鼻をつくようなすえた臭いが辺りに漂っているのに気がついた。どうやらそれは、大介の身体から漂っているものらしかった。 窓から差し込む日差しの下でよく見ると、着ているチェックのカジュアルシャツとカーディガンはすすけた感じで、何日も洗濯していないようで所々黄ばんでいた。 裕子は、まずは大介に食欲があるのかが心配だった。そこで、裕子の提案で、気分転換に近くの定食屋に食事に出かけた。 「ここは、私がお金出すから、好きなもの、何でも食べてね」 そう促すと、大介は、唐揚げ定食を注文した。 ちゃんと、食べれるんやと裕子は驚いた。歯が全部抜けているので、柔らかい物やそばやうどんなどの麺類を頼むのかと思った。しかし、大介は、揚げたてで来た唐揚げをとても美味しそうにほおばり、歯茎で上手にかみ砕いた。そして、ご飯と味噌汁をお代わりした。外食するのも15年ぶりらしく美味しそうに食べているのが印象的だった。 きっと兄は、私にも話したくないことがいっぱいあるんだろう。今は、何も話さなくていい、会ってくれただけでいい。兄の体調を心配していた裕子は、兄の食べっぷりにひとまず安心して自分の息子のことや、夫のことなど近況を伝えた。
【関連記事】
- 【つづきを読む】「ひょっとして、俺の身体、臭うかな?」家はゴミ屋敷、15年間ずっと無職の兄(55)の生活を立て直したい…20年ぶりに再会した妹の“決心”
- 【もっと読む】「まるで醤油をひっくり返したような…」長女(53)の部屋の入口から液体が垂れていると連絡が…高齢の両親が目の当たりにした“想像を絶する光景”
- 81歳ひとり暮らしの父がラブホテルから救急搬送、いったい誰と…? 息子が驚愕した“老いた親の性生活”
- 「所持金3400万円」「右手指がすべて欠損」兵庫のアパートで孤独死した“謎の女”…取材でわかった身元不明女性の“正体”とは
- 死後1か月の亡骸が残された部屋で発見した2匹の猫…“事件現場清掃人”が明かす「人を殺す部屋」の共通点とは