支持率下落の韓国与党、野党提案の「国政運営協議体」受け入れ…政権乗っ取りへの警戒感も
【ソウル=仲川高志、依田和彩】韓国の保守系与党「国民の力」は、政府の政策を決めるために国会と与野党の代表者が話し合う協議体の設置を事実上受け入れることを決めた。戒厳令を宣布した尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の擁護を続ける姿勢に世論が反発し、与党の支持率は下落基調が続く。左派系最大野党「共に民主党」が求めていた協議体設置を拒めば国政の混乱が長引き、得策ではないと判断したとみられる。
与党の代表代行を務める権性東(クォンソンドン)院内代表は20日、「国民生活と安全保障について話し合うための協議体に参加する」と述べた。韓国紙・朝鮮日報は協議体について、大統領職務を代行する韓悳洙(ハンドクス)首相、禹元植(ウウォンシク)国会議長、権性東氏、共に民主党の李在明(イジェミョン)代表の4人で構成する方向で検討が進んでいると報じた。
協議体設置は李在明氏が15日の記者会見で与党に提案した。国会(定数300)は与党が108議席と過半数に届かず、単独では予算案や重要法案を可決できない。170議席を有する最大野党が協力すれば、国会運営や行政は円滑に進む可能性が高くなる。
尹氏の弾劾(だんがい)訴追による国政のマヒ状態に乗じて、共に民主党には政権を乗っ取る意図があるとみて与党は警戒している。それでも受け入れた背景には、国政安定化の必要性のほか、尹氏の弾劾訴追案の採決で取った反対姿勢に対する世論の強い批判がある。
韓国ギャラップが20日に発表した世論調査結果によると、与党の政党支持率は前週と同じ24%だったのに対し、共に民主党は48%で8ポイント上昇した。両党の支持率の差は2022年5月の尹政権発足以降で最大となった。次期大統領選に向け、李在明氏の独走阻止を図ったとの指摘も出ている。
韓国メディアによると、協議体の初会合は近く開かれる方向だが、成否は不透明だ。
協議体では、国会で野党主導で可決された農産物の価格保障法案など6法案なども議題に上がる見込みだ。韓首相が19日に6法案への拒否権を行使したのに対し、共に民主党は反発している。今後、弾劾訴追案提出のカードをちらつかせ、政府・与党を揺さぶってくる可能性がある。共に民主党が協議体を政局に活用すればするほど、政策決定の場としては機能しなくなりそうだ。