「本当は打撃のチームを作りたいけど」京都国際監督が覗かせた本音…低反発バット元年の甲子園で見えた課題に、今こそ「リーグ戦」の検討を
指揮官の複雑な感情は見てとれた。 第106回全国高校野球選手権大会は、京都国際の初優勝で幕を閉じた。2人のサウスポーを擁し、守って守って少ない攻撃チャンスを生かす。準優勝した関東一もまさに同じようなスタイルで、決勝戦が0-0からの延長タイブレークで決着したことは、今年の高校野球を象徴しているかのようだった。低反発バットに基準が変更になり、打球が飛ばない。パワー野球は消滅し、守って勝つ野球が大会の頂点に君臨したという結果はとてもわかりやすかった。 【写真】どんな戦い方をしようとも、試合後のハグと涙は美しく…京都国際と関東一の「テレビには映らなかった現場写真」を見る 「本当はバッティングのチームを作りたいんですけどね。今までと違う形で日本一になれたのは大きな財産になりました」 優勝決定後の囲み取材の中で本音を覗かせたのは京都国際・小牧憲継監督だった。 元来、京都国際は甲子園で勝つことよりプロ野球選手輩出を目指すチームだった。事実、甲子園出場回数よりプロ野球選手の輩出人数の方が多い。
守備力、1点の重みを痛感させられたが…
一方、準優勝した関東一の指揮官、米澤貴光監督も、こう漏らした。 「選手がいればそういう野球をしますけど、今年のメンバーを見た時に、守備のチームが理想かなと思って、守備のいいチームを作ろうと考えました」 彼らが今大会で見せた守備力を前面に押し出した野球スタイルは、今年のメンバーの力量から選ばれたものだったが、奇しくも、それが結果を残すという形になった。 京都国際の戦いぶりも、関東一の鉄壁のディフェンスも、改めて野球の大事なことを教えてくれた。守備力の強化や、試合における1点の重みを伝えてくれた今大会ではあった。 しかし、低反発バット元年であった今年の戦い方が、目指す本当のチームづくりではないことは彼らの言葉からも感じられる。攻撃的なチームを作りたいけれど、それはできない。打球が飛ばない現状、この野球を選択するのがベストだったというわけである。 大会前の注目として、得点が見込めない中、どんな野球をするかが鍵だというコラムを書いた。バント、エンドランを駆使して緻密に攻め、守備は堅実に守る。いわゆるスモールベースボールに徹するのか、それとも、これまでのように、パワー野球で挑むのか。あるいは、本来はパワー野球を主眼とするが、今年に限りスタイルを変えて挑むのか。 大阪桐蔭、智弁和歌山、健大高崎、花咲徳栄といった強豪校がよもやの2回戦までで敗退を喫し、関東一がスモールベースボールの頂点のような試合をする明徳義塾に競り勝った勢いのまま、攻撃型の東海大相模を破る。そして、九州の雄・神村学園も守備力で上回って勝利。一方、京都国際は3試合で完封勝ち。準決勝では東北のタレント集団・青森山田の行く手を阻んだ。
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