高機能性玄米で都市農業元気に JA北大阪が商品化「WE米」
介護施設、学給に販路拡大
大阪都心近郊の吹田市と摂津市を管内とするJA北大阪は、高い機能性が確認された玄米を「WE米(ういまい)」として商品化し、都市農業振興の切り札として販路を広げている。血糖値の上昇抑制や血中の中性脂肪低下などの効果が期待できることから、健康志向の高まりも追い風となり、地域の介護施設や飲食店、学校給食などで提供する動きが広がっている。 【表で見る】WE米とは? 「WE米」は、生活習慣病の予防効果が期待される栄養素を多く含む。その機能性の高さから、介護業界などで注目が集まる。 摂津市の介護老人福祉施設「摂津いやし園」では、2月から昼食に「WE米」を週3回提供する。導入の決め手は豊富な食物繊維。同施設の管理栄養士を務める原田早百合さんは「(施設利用者の)腸を動かすために食物繊維は欠かせない」と話す。利用者が食べるメニューでも特に米の完食率は高く、「毎日継続して食べるご飯で豊富な栄養が取れるのは(WE米の)利点」という。
ガンバ大阪 ユース選手寮にも
JAは大阪府内の大学と連携したレシピの提案や試食会の開催などを通じ、「WE米」の魅力を発信。健康維持や体づくりを意識するサッカーJ1ガンバ大阪のユース選手寮をはじめ、摂津市の全小学校の学校給食や企業の社員食堂などでも導入の動きが広がる。 一般消費者向けの商品開発にも力を入れる。これまで、白米に混ぜて炊く機能性表示食品「農協のスーパーすぎるごはん」と「農協の生活習慣米ういまい」の2種類を開発。いずれも大手スーパーやJA直売所、電子商取引(EC)サイトなどに販路を広げ、累計販売数2万1500個と売れ行きを伸ばす。 「WE米」の栽培は今年で7年目。現在は管内の6戸が2・5ヘクタールで栽培し、2024年産は9トンの収量を見込むなど、産地化が進む。摂津市の農業法人アグリズム摂津の渡邊勝彦代表は、18年から栽培。JA管内は都市部で農地が少ないが「機能性の高いWE米なら産地化に希望が持てる」(渡邊代表)と考え、現在は70アールに作付けする。 JAは「WE米」を通常の米より倍の価格で買い取り、農家所得の向上につなげる。JAの川上光男組合長は「都市農業振興には、少ない農地でも高収益が見込める農産物の栽培提案が欠かせない」と指摘。「WE米は農地を次代につなぐ鍵になる」と強調する。
日本農業新聞