三和建設「ゼネコンがつくったしおゼリー」…夏の現場 つるんと塩分補給
中堅ゼネコンの三和建設が販売する「ゼネコンがつくったしおゼリー」は、真夏の炎天下で働く建設作業員の熱中症を防ごうと開発された。喉が渇いていてものみ込みやすい形状と絶妙な塩加減が特徴だ。構想から5年で、一般の消費者も口にする商品となり、昨夏には累計販売が100万本を突破した。(升田祥太朗)
開発のきっかけは
開発のきっかけは、宴席での何げない会話だった。 「夏場の建設現場は大変ですね」「そうなんですよ。ホンマにたまりませんわ」
2019年夏、大阪・十三の居酒屋で、三和建設大阪本店長の川口秀夫(49)は機能性食品などの製造を手がける岩瀬コスファ(大阪市)の社員と杯を交わしていた。三和が17年に岩瀬の倉庫建設を手がけたのが縁で、工事を担当した川口は岩瀬の社員と定期的に交流する仲になっていた。
当時、建設現場では熱中症対策でアメや塩タブレットを摂取するのが一般的だった。だが、過酷な暑さの中で固形物を口に含むのをためらう作業員も少なくなかった。15年間の現場経験がある川口自身もその一人だ。「建設業のイメージ改善のため、熱中症リスクを減らしたい」と効果的な対策を模索していた。
商品開発へ
川口の悩みを聞いた社員の発案で、岩瀬は建設作業員向けの商品開発に着手した。プロジェクトを任されたのが、約20年にわたり大手食品スーパーのプライベートブランド(PB)商品の開発を手がけてきた経験とノウハウを持つ星山仁史(45)だった。
のみ込みやすさを重視して素材にはゼリーが選ばれた。熱中症予防のカギとなるのは塩分だ。星山は半年ほどかけ、「しょっぱすぎず、ちょうど良い 塩梅(あんばい) 」を探り当てた。川口の意見も取り入れ、食べ飽きないように数種類の味をそろえ、容器も手軽なスティック状を採用した。
20年夏、三和の現場で作業員に配ったところ、「食べやすくておいしい」と好評で、それまで毎年数人は出ていた熱中症の搬送事例もゼロになった。