30年間「衰退の一途」だった日本企業…令和が「絶滅期か、再生期か」の分岐点となるワケ【経営学者が解説】
今こそ「悪循環」を断ち切る絶好の機会
~矛盾と混乱に満ちた現代ならではの勝機 悲しいかな、かく言う筆者も、リーダーシップの悪循環の片棒を担いできた大いなる勘違い世代の一人である。そのため、言葉に重みや信憑性を欠くことを承知でいえば、「今こそ、悪循環を断ち切るチャンス」である。 令和時代がスタートし、パンデミックが終息した現在こそ、今後の日本の浮沈を占う重大な時であり、その担い手、主役は青年期や壮年期の血気盛んで働き盛りの人々である。平成の30年間を通じて、日本企業・日本経済は確実に弱体化した。ライフサイクルからいえば衰退期の後に来るのは死滅であるが、それをただ待つのも愚かである。昭和末期の残党の多くも退場しつつあるから、今こそ悪循環を断ち切る絶好の機会である。 幸か不幸か、この30年間に社会環境も経営環境も地球規模で大きく変わり、「何が正で、何が否であるか」の線引きも不鮮明になっている。かつて不適切であったものが適切に転じたかもしれないし、かつて適切であったものが不適切に転じたかもしれない。あるいは、かつて不適切であったものは依然として不適切かもしれず、逆も真なりかもしれない。 どちらにしても、不連続で魑魅魍魎が跋扈するグローバリゼーションが進展した現代社会には、処々にチャンスの窓が開いていることは確かである。東京2020オリンピックでメダルの数が激増したのは、アスリートの血の滲むような努力だけではない。新しい競技や復活した競技が増え、それに果敢に挑戦したことも大きな要因である。 矛盾と混乱に満ちた世界では、それを解消する手段を見つけることで大きなチャンスが生まれるはずである。不連続な今こそ、これまでの悪循環を断ち切ってやり直すことができるはずである。 ----------------------------------------- 【注】 *1) 岩﨑尚人、『コーポレートデザインの再設計』、白桃書房、2012年を参照。 *2) ハラリY. N. は、著書『21レッスンズ』の中で、生命体の活動はすべてアルゴリズムで決定されているとするものの、心だけは異なると指摘している。Harari, Y. N., “21 Lessons for the 21st century”, Random House,2018を参照。 *3) メンバーシップ型雇用の対概念は、ジョブ型雇用である。前者の雇用タイプの典型は終身雇用制であり、後者の典型はプロフェッショナルの社外人材である。わが国でも日立、富士通、KDDI、資生堂などがその導入に積極的に取り組んでいる。 ----------------------------------------- 岩﨑 尚人 成城大学経済学部教授、経営学者 1956年、北海道札幌市生まれ。早稲田大学大学院商学研究科博士課程後期単位取得満期退学。東北大学大学院経済学研究科修了、経営学博士。経営学の研究に加え、企業のコンサルティング活動に従事。主な著書に、『老舗の教え』『よくわかる経営のしくみ』(ともに共著、日本能率協会マネジメントセンター)、『コーポレートデザインの再設計』(単著、白桃書房)などがある。
岩﨑 尚人