【鉄道の安全対策】現場で働く人が「基本動作」にしたがって動く意味と、「ヒューマンエラー」があってもバックアップする機械の役割
安全を知ると鉄道がわかる
以上、長々と説明しましたが、これらは鉄道における安全の考え方や安全対策のほんの一部にすぎません。また、鉄道における安全対策は、時代ごとに刻々と変化しており、鉄道事業者によって異なる点もあるので、全体像がつかみにくいです。 また、鉄道で死亡事故が起こる確率は、自動車のそれよりもはるかに小さいため、「鉄道は安全」と思っている人がいるかもしれませんが、そう言い切れるほど鉄道は完璧ではありません。もちろん、鉄道の安全性を100%に近づけるための対策や努力は日々行われていますが、100%に到達させることはできません。これは鉄道に限らず、すべての技術に共通することです。 こうしたことは、鉄道が好きな人に向けた書籍や雑誌、ネット記事に書かれることはほとんどありません。安全の話は、趣味的に面白みが欠けるうえに、実際に安全を意識する職業に就かないと理解できない部分があるからです。 ただし、今回ふれた「鉄道の安全」の一端を知ると、「鉄道は安全な輸送を実現するシステムである」という全体像が見えやすくなり、鉄道に対する理解を深められるでしょう。 【プロフィール】 川辺謙一(かわべ・けんいち)/交通技術ライター。1970年生まれ。東北大学工学部卒、東北大学大学院工学研究科修了。化学メーカーの工場・研究所勤務をへて独立。技術系出身の経歴と、絵や図を描く技能を生かし、高度化した技術を一般向けにわかりやすく翻訳・解説。著書多数。