「とにかく質推し」だったセブンが方向転換した訳 国内コンビニ大手の中で「1人負け」…打開策は
その点を明確にして、「買収提案(で提示された額)より高い株主価値を、独自路線で実現できるんだ」と株式市場に示す目的がありそうです。 ■「値段がちょっと高い」という印象 ――国内のコンビニ事業の現状は? 足元はかなり苦しい状況です。国内については店舗数がここ数年伸び悩んでいますし、中長期的に考えても、10年前のような出店によるシェア拡大は今後ほとんど見込めないでしょう。 それに加えて、国内のセブンーイレブンは長らく、「品質はいいけど値段がちょっと高いよね」という印象を多くの消費者に与えてきた面があると思います。それが今、インフレという長らく日本経済の直面して来なかった状況下で数字にも如実に表れるようになり、ファミリーマートやローソンが(売り上げを)伸ばす中、セブンは苦戦しています。
お客さんから敬遠されていることには経営陣も課題を感じているようです。ここをどう乗り越えられるかというのがセブンーイレブン・ジャパンとしては課題ですね。 ――具体的にどんな策を講じていますか? 先ほど申し上げたように、出店によるシェア拡大とか事業拡大はなかなか見込みづらい。その状況下で再成長するには、お客さんがセブンに持っている「割高」というイメージを拭うことが喫緊の課題です。 最近、お近くのセブンの店舗に行かれた方はわかると思いますが、「うれしい値!」というピンク色のPOP、セブンで今まであまり見なかったビビッドな色のPOPがたくさん目につきます。「実は値頃感のある商品もたくさんあるんですよ」というPRを前面に打ち出していると。
これはセブンを知っている人からすると、結構驚きです。「とにかく質」で推してきたイメージのセブンが価格を押し出しているという点に、業界関係者からも注目が集まっています。 もちろん「高品質」という点は譲れないと会社は言っていますが、それとは別に「低価格」という点にフォーカスし始めたというのは、セブンーイレブンとしてはすごく大きな挑戦をしているのだな、そこを最大の課題と感じているんだろうな、というのが見て取れますね。
冨永 望 :東洋経済 記者