韓国法曹界「非常戒厳事由なのか疑問…大統領弾劾条件満たす」
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が3日夜に宣言した非常戒厳は朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領が殺害された1979年10月26日に宣言されてから45年ぶりで、憲政史上で17回目だ。1987年の民主化後には一度もなかった初めての事態であるだけに法曹界では戒厳宣布要件と戒厳の効果をめぐり解釈が入り乱れている。 憲法上の戒厳宣布要件は「大統領は戦時・事変またはこれに準じる国家非常事態において兵力で軍事上の必要に応じたり公共の安寧秩序を維持する必要がある時」(第77条第1項)宣布が可能だ。過去の麗水(ヨス)・順天(スンチョン)事件、韓国戦争(朝鮮戦争)、5・16軍事クーデターなど戦時または戦時に準じる状態で宣言されてきた。これと別に戒厳法は、非常戒厳は「敵と交戦状態にあったり社会秩序が極度に混乱し行政および司法機能の実行が顕著に困難な場合に軍事上の必要に従ったり公共の安寧秩序を維持するために宣言する」と規定している。 尹大統領は最近野党「共に民主党」の検事など公職者弾劾、予算削減などの行政府のまひを根拠とした。これに関し法学者は大統領が言及した状況が憲法に規定した戒厳の実体的要件である「戦時・事変またはこれに準じる国家非常事態」に該当するのか疑問を提起した。ソウル大学法学専門大学院のハン・インソプ教授はフェイスブックに「非常戒厳の理由は到底成立しない。今回の非常戒厳宣布は大統領弾劾事由の十分条件を満たす」と指摘した。また「国会招集を妨げたり議員の国会会議場の出入りを妨げれば大統領の内乱犯罪が成立する」と強調した。 高麗(コリョ)大学法科大学院のチャ・ジナ教授も「戦時・事変またはこれに準じる国家非常事態とは軍兵力や警察力で秩序が維持できない状況を意味する。民主党が司法府の独立と刑事司法手続き機能を制限しているといっても戒厳を宣言するほどの行為と評価するのは難しい」と話した。同大学院のチャン・ヨンス教授はさらに「今回の戒厳宣布が弾劾理由になりうる」とも話した。チャン教授は「非常戒厳に対する大統領の権限を誤用・乱用したとすれば弾劾理由とみる可能性が高い」と話した。 合わせて今回の戒厳は尹大統領の放送会見を通じて宣言された。これに対し戒厳宣布の手続き的要件である閣議での審議を経たのかもカギだ(戒厳法第2条第5項)。ある裁判官出身弁護士は「閣議を経なかったとすれば明白な戒厳法違反」と指摘した。戒厳司令官は戒厳宣布と同時に「戒厳地域のすべての行政事務と司法事務を管掌」(戒厳法第7条第1項)することになる。国防部長官の指揮と監督を受けるが、戒厳地域が全国の場合は大統領が直接指揮できる。 戒厳司令官が司法権を持つことになり進行中の裁判に影響を及ぼすかも関心事だ。チャン教授は「裁判所の令状を受けるだけで逮捕拘束できるが、令状がなくても逮捕拘束できるようになる可能性は排除できない。裁判を変えられなくても中断させることはできるだろう」と予想する。 合わせて「情報・保安業務を掌握する機関を含む行政機関と司法機関はただちに戒厳司令官の指揮・監督を受けなくてはならない」(第8条第1項)としている。また、戒厳法が定めた国家保安法違反と公務妨害に関する罪などは裁判を軍事裁判所で担当する。戒厳司令官の必要に応じて該当管轄裁判所で裁くこともできる。