三人称・鉄塔イチオシ!「記憶をなくしてもう一度やりたい」一筋縄ではいかない推理ゲームの面白さ
4年もの間航海を続けていたオブラ・ディン号に何が起こったのかを探るべく、沖合に浮かぶその船に小舟で移動する主人公。 「社の人間にたたき起こされたぜ。あんたをオブラ・ディン号に渡せとな」。 粗野な言葉が聞こえたかと思うと、画面の中央に字幕が表示されます。この会話のやり取りで、そう語りかけてきた男が渡し舟の船頭であることと、調査員が女性であることが分かります。
昨今のゲームは、登場人物が実際に口を動かして会話をし、その表情までも変化するというのが主流ですが、このゲームは自分以外がまるで時間が止まっているかのように静止しており、誰が誰に話しているのかは分かりません。紙芝居を見ているようなもので、見ているこちら側が、口調や台詞から推測する必要があるのです。 ひょっとするとこのゲームは一筋縄ではいかないかもしれない……。 そんな予感がしました。
無人となった船に白骨死体……何が起きたのか?
乗り込んだ船に人影はありません。 ただ、船首に一つ、白骨死体が転がっています。 依頼主の命令で船に持ち込むことになったトランクを開いてみると、一冊の本とひとつの懐中時計が入っていました。
分厚い本を開くと、始めのページには依頼主から主人公に向けて書いた言葉が記されています。 同胞がたどった数奇な運命をこの手記にしたためたこと。しかし、健康状態が悪かったため大まかなあらましを書き残すのが精一杯であったこと。懐中時計を使用して全乗組員および乗客の身元と、彼らに何が起きたのかを探ること。
ただ、その手記は乗組員の名簿や船上のスケッチこそ見ることができるものの、何が起こったかを記しているはずの「物語」は、章立てて分かれている題名以外は白紙の状態でした。 一体何をどうすればよいのかわからぬまま、同梱されていた懐中時計を取り出します。懐中時計には髑髏(どくろ)の文様が刻まれていました。 試しに船首にある白骨死体にかざしてみると、くるくると時計が逆回転をし始め、やがてひとつの回想シーンが始まるのでした。