愛知県美術館「わいせつ写真に布」の波紋
名古屋市東区の愛知県美術館で開催中の写真展で、展示中の作品が「わいせつ物の陳列にあたる」と愛知県警から指摘され、作品の一部を覆い隠すなどの対応を迫られたとして波紋が広がりました。ネット上では「表現活動への不当介入だ」と警察への抗議や指示の撤回を求める署名活動も展開されています。「芸術とわいせつ性」をめぐっては何度も事件や議論が繰り返されていますが、今回の問題の本質は何なのでしょう。 ■匿名の通報で動いた警察 問題になったのは8月1日から始まった企画展「これからの写真」に出品された写真家、鷹野隆大さんの作品。鷹野さんは男性ヌードを中心とした作品で知られ、今回も代表作を含めた50点ほどを展示、そのうち12点に男性の陰部が写っていました。 このため美術館側は当初から来館者に対し、「一部の作品が不快な印象を与える可能性もある」などとする掲示を出し、他の展示室とカーテンで仕切るなどの配慮をしていました。ところが、匿名の通報を受けたとする警察が12日、法に抵触する恐れがあるとして12点の作品を撤去するよう指示、美術館側は鷹野さんを交えて協議した結果、問題の作品には布をかけたり、半透明の紙を張ったりして対処、県警は納得したとされています。 企画展の主催者である朝日新聞が13日にこの件を報じ、各メディアも後を追いました。ネット上では写真家の有志らが即座に署名活動を始め、22日現在で2700人以上が賛同。「表現の自由の危機だ」「県警は判断のプロセスを公開するべき」などの声が集まっています。鷹野さんはネットメディアのインタビューで、検挙の対象が自身ではなく美術館の職員だったと明かした上で、「美術館の表現の自由が侵された」「行政の安易な介入だ」と警察の対応について苦言を呈し、波紋が広がっているのです。 ■「自主規制には走らない」 美術館側にはどんな意見が寄せられているのでしょうか。「圧倒的に多かったのは『隠すことはない』『警察の言いなりになるな』という意見。一方で少数ながら『警察から指導されるような展示をするとはけしからん』といった声もありました」と同館の高橋秀治副館長。