「ゆるブラック企業だから…」 残業ゼロの23歳の新人女性社員が会社を辞めた驚愕の理由
新卒社員が入社3年以内に退職する割合は3人に1人と依然として高い。その上、早期退職者に口コミサイトに批判的な投稿をされて“ブラック企業”のレッテルを貼られれば、企業としては致命傷になる。早期退職を防ぐ手段の一つとして、先輩社員に新人への指導や日常のケアを担わせるメンター制度がある。メンターは負担が大きい役回りだが、一方で、新人から不満をぶつけられ、彼らの退職の責任まで負わされるような理不尽なケースもある。元大手人材紹介会社教育研修部長で、新入社員の活躍支援にも携わる川野智己氏が、実際にあった「修羅場」を紹介する。 【写真】駅構内で「名刺交換してください!」という若者たちの正体は? * * * 高田薫(仮名=36歳、女性)は、ある業界団体の子会社で事務職として働いている。職員数は約80人。高田はキャリア10年目で、親会社の所有する社員寮の管理を任されている。理事長は親会社の役員が定年後の雇用先として数年ごとに天下ってくる。幹部もほとんどが親会社からの出向・転籍組だ。 一方、プロパー社員は出世意欲がない人ばかりで、親会社出身者が幹部ポストを独占する状態に、特に異を唱える者もいなかった。普段から彼らの指示の通り従えば責任も免れるからだ。 「え! 私がメンターですか?」 ある日、部長との会話の中で高田はこう叫んだ。 「君しかいないんだよ。去年は、山田課長がやって失敗したし、女性は女性同士が良いはずだ。歳も離れすぎていないし最適だと思うよ」 高田は、部長から呼び出され、4月から入社する女性の新卒職員のメンターとして任命されたのだ。 「部長、都合の良い時に限って『女性同士だから』と言うのはずるいですよ。それに、去年の新人が退職したことで、当時のメンター役だった山田課長は減給されましたよね。私には荷が重いです」 だが、部長からはこう説得された。 「今年は大丈夫。理事長も、年初のあいさつで言ってたじゃないか。『新卒社員は将来のエリート幹部だ。大切に育てろ』と全職員に厳命したのを覚えているだろ。具体的には、残業もやらせない、キツイ仕事もやらせない。“さん付け”で呼ぶ。新卒にも敬語で話す。これらを全社規則として4月から導入する。若手の離職防止は全職員の課題なんだ。君一人に押し付けるわけではなく、俺もサポートするから」