PTAは必要か? 義務だった”ブラック労働”をボランティア中心の「PTO」にした都内小学校の改革プラン
「大切なのは柔軟性」背景には増える共働き
PTOの役員は、全体としては40人いる。それに加えて、そのときどきに募集するボランティアが入る。志望して参加する運営メンバーは、毎年20人ぐらいが入れ替わって、新しい人が入ってくる。 「役員は、季節性もあるので、ずっと忙しいわけではありませんが、企画とか町内会との折衝などを含めて、800人を超える学校だと最低でも20人は必要だと思います。 人員がいないときはイベントを縮小し、変化させます。実は去年、夏祭りという大きいイベントがあり、コロナ禍でボランティアをしたことがない保護者も増え、運営が大変でした。 それで今年は映画上映会にして、ポップコーンやわたあめなどを用意しました。そうすると、運営が10人ぐらいでできる。人数に合わせた形と規模で、子どもが楽しめるよう柔軟に活動しています」 実際のボランティア参加は、忙しければ無理はしなくていい。ただサポーターが減り過ぎると、イベントが運営できなくなる。 「そういったメッセージの発信は、続けないといけません。特にコロナ禍の数年は『何もないから何もしない』という状況で、保護者がそれに慣れてしまったのではないかと感じています。 イベントごとのサポーター募集に関しては、お手紙を配っています。家庭数が多いため、メルマガやLINEだけでは届かない。サポーターに参加していただくと特典もあります。 例えば運動会だと写真が撮りやすい席はサポーター用にして、自分の子どもの出番のときには、そこで撮れるんです」
地域作りに思いがあるか
久米さん自身も、広告代理店や外資IT企業に勤めた経験のある発信のプロだ。それでも紙でメッセージを発信し続けるなどアナログな手法も残し、さまざまな機会に伝える努力をしている。 「先日、行政関連の方と面談があったんです。ボランティア制やPTA的な組織の存続に関しては、論点が二つあるとお伝えしました。 一つ目は、ボランティア制にしたほうがいい背景です。今は働くお母さんも増え、この前実施したPTOアンケート(320人から回答)でも、共働き家庭がパートを含め8割もある。すると地域に還元できる時間は少なくなる。できる人ができるときに、という参加の柔軟性が求められています」 もう一つは、アンケートに回答していない保護者がどういう状況かわからない、という久米さん。 「公立小学校は私立と違って、いろいろな家庭環境の方がいると思っています。例えば忙しくて遊びに連れていく時間がない方がいたとして、PTOが企画するイベントに子どもが無料で参加できれば、貢献できるのではないでしょうか。 地域全体のことを考えれば、こういうものがあるほうが、住みやすい環境になる。ただ、そこまで理解するのもハードルが高いですし、今は外注によって解決しようという流れがある。 PTA活動を外部委託している学校は全国の6%ぐらいらしく、費用を調べたら最低限のことをやって年間でおよそ80万円の出費になります。そうした選択肢もありますが、今はPTOでいてほしいという意見が、保護者の8割以上なんです」