『生きのびるための事務』著者、坂口恭平さんインタビュー。「事務は僕にとって、冒険をするためのもの」
「事務は僕にとって、冒険をするためのもの」
作家、画家、音楽家、建築家として盛んに活動する坂口恭平さん。生き悩む人の電話に24時間対応する“いのっちの電話”でも知られる。「9歳から86歳まで1日100人を超えた日もあります」 このたびの新刊は夢を現実にするための指南書。『POPEYE』のWeb連載、しかもコミックとあって未来ある若者向きの本かと思いきや、いやどうして大人にも十二分に有用な、この先10年後に理想の人生を叶えるためのロードマップだ。今50歳でも60歳でも、多くの場合10年後はやってくる。そして大人世代こそ、その時間があれば多くのことは可能だが、逆に何もしなければあっという間に過ぎてしまうものだと知っている。いま自分の手に残っているものが何かを見つめ直す世代なのだ。そうでしょう?
本作では、大学卒業は決まったけど就活もせず、実家からの仕送りも止まりそうな22歳の坂口青年が、部屋に突然現れたイマジナリーフレンド、ジムに導かれ、望む人生を送るためのノウハウを学ぶ。’80年代を生きた世代にはレイモンド・マンゴーの『就職しないで生きるには』の気配を感じて懐かしいが、 「あの本にあったのは時代の気分で、具体的な方法はなかったですよね。僕の本には、実際に実現できるやり方が書いてある」 書名の“事務”とは給与計算や保険の点数を数える類ではなく、〈抽象的なイメージを数字や文字に置き換えて、《具体的な値や計画》に見える形にする技術〉。 ジムは10年後の成功した自分の理想的なタイムスケジュールをノートに書き出すことを勧め、現実の自分がそれをトレースする方法を伝授する。目標とする収入額を立て、それを得るためのシンプルで現実的な戦略も。 「事務とは広大なフィールドに線を引くこと。事務をお金の話と同様にみんな嫌なものだと思っている。『今日は時間があるから事務でもやるか』みたいな。僕にとっては冒険をしたいとき、ワクワクしたいときまずやることです」