ロシア軍の前進加速、要衝に迫る-ウクライナでは悲観広がる
(ブルームバーグ): ウクライナ東部でロシア軍の前進が加速している。今週に入り占領した領土の面積は今年のどの週よりも大きく、西側のウクライナ支援国には防御強化への圧力が増している。
ロシア軍は兵士や兵器に甚大な損失を出しながらも夏を通じて攻勢を続け、今週は占領地を200キロ平方メートル広げた。ウクライナ国防省と協力する地図サービス「ディープステート」に記録されるデータを基にブルームバーグ・インテリジェンスが算出したところによると、8月6日以降にロシア軍が占領したウクライナ領土の面積は合計1146平方キロメートルに達し、戦争開始直後の7カ月に占領した面積の4分の1を上回った。
来週の米大統領選挙の結果次第で、ウクライナは不利な条件での和平受け入れや単独での交戦継続を強いられるかもしれないと、ウクライナ大統領府に近い関係者2人が語った。戦争の行方について、当局者の間では悲観が強まっているという。関係者は慎重に扱うべき問題を話しているとして、匿名を要請した。
1000日近くに及ぶロシア侵攻の犠牲や困難が重くのしかかる中で、暗いムードはウクライナ市民の間にも広がり始めている。キーウを拠点とするラズムコフ・センターが2016人を対象に9月に実施した調査によると、ロシアと和平交渉を開始すべきだとの回答が3分の2を上回り、前年の同時期に比べ14ポイント上昇した。
ロシアの進軍はなお漸進的で、プーチン大統領が自国領だと違法かつ一方的に宣言したウクライナ東部4州の全領土の掌握には程遠い。それでも米国が大統領選挙に忙しく、その結果を欧州諸国が神経質に見守る中で、プーチン氏は一気呵成(かせい)に攻め込んでいる。共和党候補のトランプ前大統領は、自分ならウクライナでの戦争を速やかに終結させると主張し、ウクライナ防衛への支援継続に懐疑的な見方を示している。
ウクライナのゼレンスキー大統領は10月29日に記者団に対し、同国軍は米国が4月に約束した610億ドル(約9兆2800億円)の支援パッケージのうち1割しか受け取っていないと述べ、官僚手続きや物流が原因で届くのが遅れていると非難した。同氏はウクライナがロシア領内の軍事標的を攻撃できるよう米国に長距離兵器の供給を繰り返し訴えているが、聞き入れられていない。