ボルボV40に見る最も先進的な“ぶつからないクルマ”
警察庁による日本の交通事故統計をみると、事故発生件数(95万件)、負傷者数(118万人)ともにピークは2004年である。一方、死者数は1992年を境に24時間以内死者数と30日以内死者数を別計上する方式に変わったため、それ以前との直接比較はできない。 【図表】<ぶつからない自動車>障害物を検知するブレーキシステム ただはっきりしているのは2004年からの直近10年間をみると、どの数値も明瞭に右肩下がりである。自動車事故が景気と連動するのはよく知られている。景気がよくなれば交通量が増えるためだ。そういう意味では景気の悪かった時期と重なっているとも言えるのだが、総合的に見れば様々な要因があるはずだ。例えば医療進歩によって命が助かったケースもあるだろう。しかし、それ以上に、クルマの安全装備の向上も大きいのではないだろうか。しかもいま、その安全性がグッと進化している。今回はそういう話をしてみたい。
障害物を見つけ、判断し、操作する
自動車の運転をする時、われわれは目で見て、頭で考えて、手足で操作している。もちろん時には目ではなく耳だったり、鼻だったりということはあるが、つねに周辺とクルマの情報を取得して、それに判断を加え、操作をしていることに変わりない。そして、障害物を見落としたり、判断を間違えたり、操作を誤った時に事故が発生するわけだ。 つまりぶつからないクルマを実現するには「障害物を見つけ、判断し、操作する」という3つをクルマができるようにしなくてはならない。そしてそれは、瞬間的とはいえドライバーの関わらない自動運転を意味することになり、ドライバーとクルマの間の主従関係、あるいは補完関係をどう築くかという高い思想性も同時に求められる。「自動化を安全に」ではなく「安全のための自動化」を考えなくてはならないのだ。 ボルボV40は、2014年現在、市販されているクルマの中で「ぶつからないクルマ」として最も先進的な一台だ。あれもこれも現在の最先端の安全機能がほぼ全部ついている。しかもオプション扱いではなく「全車標準」。それでいて最廉価グレードは車両価格が300万円を切っている。一昔前のミリ波レーダーブレーキシステムがオプションでほぼ100万円だったことを思うと、この種の装備がいかに身近になったかがよくわかる。 しかし安全装備の前にしておかなくてはならない話がある。安全装備をいかに積み増そうが、クルマそのものの「走る、曲がる、止まる」がちゃんとしていないと、ちゃんとしたものにならない。考えてみれば当たり前のことだが、安全装備がキチンと効率良く作動するためにはまずクルマの出来が重要だ。ただやみくもに安全装備をつければ、それで一丁上がりではない。カタログで安全装備の充実度だけを見ても、半分くらいしか意味が無いのだ。 V40はその基礎の部分がよくできている。どうよくできているかを書きはじめるといつまでたっても「ぶつからないクルマ」の話に入れないので今回は残念ながら割愛する。 さて、先週の記事で主要な3つのセンシングシステムの解説をした。ぶつからないクルマを理解するためには必須知識なので、簡単なサマリーだけ記載しておく。 ◎ミリ波レーダー方式 遠方の障害物把握に優れ、視界条件に左右されにくいが、障害物の種別判定が得意では無く、価格が高い ◎カメラ方式 画像解析によって障害物の種別判定が可能で、比較的価格が安いが視界条件に左右されやすい ◎赤外線レーザー方式 コンパクトで安価だが、遠距離をカバーできない