ボルボV40に見る最も先進的な“ぶつからないクルマ”
クルマにぶつからない仕組み
「ぶつからないクルマ」の最も基礎的な機能で、街中や交差点でのクルマへの追突事故を防ぐ仕組みが赤外線レーザーによる自動ブレーキだ。低速(4km/h~50km/h)で走行中に、前方6m以内にいるクルマを検知すると、まずブレーキの予圧をかける。 ドライバーがブレーキを踏んでブレーキパッドが実際に仕事を始める前に、圧力ゼロのブレーキ回路の油圧を上げるために時間と力が殺がれてしまう。その予備動作を予めクルマの方でやっておくのだ。予圧がかかっていれば、ブレーキペダルを踏んだ瞬間にパッドがローターと接触して制動でき、停止距離は短縮される。 ドライバーが反応しない場合は、クルマが自動ブレーキをかける。ボルボの発表では相対速度15km/h以下なら、衝突を回避し、それ以上の場合は被害を低減する。 このシステムをボルボは「シティセーフティ」と呼ぶが、その役割は「クルマへの追突防止システム」だと言うことができる。
人やサイクリストも回避する
事故の中でも、深刻なケースが人やサイクリストとの接触だ。「ぶつからないクルマ」という以上、これも回避しなくてはならない。特に自転車は機動性に優れ、急な進路変更をする場面もあるので、より徹底した速度管理が求められる。ところが人間にとっては極めて簡単なこの相手の属性判定が機械には難しい。 V40では、これを実現するために、ミリ波レーダーシステムとカメラシステムを組み合わせて使う。具体的にはまずミリ波レーダーが前方150m、または30m先視野60度の範囲を秒間2万回走査して、障害物を最大で15個まで把握する。把握した障害物をカメラの画像データと照らし合わせて解析、障害物を「クルマ、サイクリスト、人」の3種に判別する。
速度差と距離に応じ、危険な状況と判断したら警告を発する。メーター上面にある大きな赤いランプが光ると同時に警告音が鳴ってドライバーに減速を促す。同時にブレーキを予圧し、制動への準備を行う。ドライバーが反応しなければ自動ブレーキが作動する。 人に関しては身長80cm以上、自転車に関しては高さ70cm以上にリフレクターを装着していることが検知条件だ。身長80cmというところに引っかかったので統計データを調べてみると、1歳6か月男子の平均身長だった。確かに1歳6か月以下の子どもが外をひとりで歩いているとは考えにくい。例えば、このシステムが小動物を誤認して急制動をかけた結果、後ろから別の車両に追突されるなどのリスクを考えると制動をかけるリスクは高い。システムの成り立ちから見る限り80cm以下が検知できないという話ではないはずなので、これは安全に対する見識による設定だと考えられる。 クルマに加え、人とサイクリストへの接触事故を防ぐシステムをボルボでは「ヒューマンセーフティ」と呼んでいる。