ボルボV40に見る最も先進的な“ぶつからないクルマ”
実際に乗ってみると
実際に街中を走ってみる。信号待ちで並んでいるクルマに後方から接近して、いつもより少しブレーキを遅らせてみると、光と音による警告が作動する。この時点でブレーキを踏めばパニックブレーキに至らずに止まることができた。わき見運転や居眠りなど、運転中に意識が散漫になっている場合にこの警告は十分に機能すると思われる。 自転車の側方を通過するようなケースでは、ドライバーが思うより早くから警告が発せられ、ブレーキも介入した。教習所で教わる時の様な慎重な速度管理だ。この時は自転車が段差のある歩道の上を走っていたので、運転者の判断としては進路変更のリスク無しと判断していたのだが、結果的に自転車を認識して速度調整する場面を体験できた。 高速道路では車線を逸脱しそうになるとメーターにグラフィックでその様子が表示される。同時にステアリングを自動操作して車線内に引き戻すことも行う。その際の制御はかなり自然で最低限のもので、急な進路の変更は伴わない。「ドライバーが何もしなくてもクルマが勝手に走る」というものではない。万が一のリスクを担保する仕組みとなっている。 またミリ波レーダーとカメラを使ったクルーズコントロールは非常に有用で、発進から最高速まで上手に前車に追従し、停止まで自動で制御できる。一度設定してしまえば右足はほとんど操作の必要がない。 その使い勝手にも精度にも感心したが、それ以上に驚いたのは加減速の上手なコントロールだった。V40のクルーズコントロールと同じレベルで運転できるドライバーはそんなに多くない。オートだからこんなものではなく、積極的に使いたくなるレベルで制御されている。「こういう加減速が気持ちいい」という基準がなかったら絶対に達成できないもので、これも見識のなせる技だと感じた 速度管理はクルマが制御、車線の逸脱も監視管理してくれるとなれば、クルマ任せにしてサボりを決め込みたくなる心配があるだろう。しかし実際に運転した感じでは、そういうものでは全くなかった。むしろ煩わしく気を使う部分をクルマに任せることで、周囲の状況監視により集中することができ、ストレスからの解放と安全が両立できる。 クルマを運転していて、例えば合流の時には神経を集中して緊張する。合流が終わればほっとして気楽になる。そういう種類のストレス解放がV40のクルーズコントロールにはあった。 最新システムがどういうものなのかをV40を通して追いかけてみたこの回で、安全装備の現在の話はひと段落する。次回はこのクルーズコントロールから見える自動運転の未来の話をしてみたいと思う。 (池田直渡・モータージャーナル)