自動車メーカーは、なんのためにレースをするのか? 「FIA世界耐久選手権 富士6時間耐久レース」観戦記
あらためて、そもそもなぜ自動車メーカーはレースをするのか。これまでさまざまなブランドのトップにこの質問を投げかけてきたが、おおむね以下のような回答に集約される。 ・技術開発とテスト場としての役割 先進的な技術を極限の環境であるレースの現場で試し、のちの量産車開発に活かす ・マーケティングと広告効果 グローバルなマーケティング活動の一環として。レースでの勝利はメーカーの技術力や信頼性の高さを示し、認知向上につながる。またブランド力の向上、ファン層の拡大といった効果が見込める。 ・人材育成 レースチームを運営することでマネジメントやエンジニア、ドライバーなどの人材育成を行う。レーシングチームと市販車開発チームの人材交流を行うなどして得られる経験は、とても貴重なもの。つい最近の大きなニュースとしては、トヨタ(TOYOTA GAZOO Racing)とハースF1チームが業務提携を発表。トヨタのエンジニア、メカニック、育成ドライバーなどがハースF1のテストに参加するなどすることで、人材育成の強化に取り組んでいくという。 そしてマーケティング活動の裏付けとなるものとして、そのブランドのモータースポーツに対する歴史や文化がある。ポルシェやフェラーリなどはその最たるもので、創業時からレースに参加するという文化を育み、勝利することがレゾンデートルであるという企業としての精神や伝統を表現する場としてレース活動を積極的に行っているというわけだ。
フェラーリとポルシェとトヨタのプライドを賭けた戦い
最終戦を次に控えたWEC富士ではタイトル争いも佳境を迎えており、ハイパーカークラスでは、6号車ポルシェ963(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ)がポイントトップ。これに続くのは7号車トヨタGR010ハイブリッド(TOYOTA GAZOO Racing)と、50号車フェラーリ499P(フェラーリAFコルセ)。 決勝レースは、レース中盤にトップに立つとそのまま212周を走りきった6号車ポルシェ963が見事に優勝。地元での勝利を期待されていたTOYOTA GAZOO Racingは、アクシデントに見舞われ、7号車がリタイヤ。8号車はレース終盤、3番手と表彰台圏内を走行するもドライブスルーペナルティが課され10位フィニッシュとまさかの展開に。 予選3番手からペースを維持した15号車BMW MハイブリッドV8(BMW MチームWRT)がチームとして初めてハイパーカークラスの2位表彰台を獲得。また36号車アルピーヌA424(アルピーヌ・エンデュランス・チーム)は、元F1ドライバーのミック・シューマッハーの活躍もあり、このマシンでは初の3位に入った。 LMGT3クラスでは、54号車フェラーリ296LMGT3(ビスタAFコルセ)が優勝。92号車ポルシェ911 GT3 R LMGT3(マンタイ・ピュアレクシング)が2位に。92号車はこれでLMGT3クラスの初代王者を確定させた。3位には、元MotoGPの伝説のライダー、ヴァレンティーノ・ロッシの追い上げもあり、46号車 BMW M4 LMGT3(チームWRT)が入った。 2024年のWEC最終戦は、10月31日~11月2日、中東のバーレーン・インターナショナル・サーキットで行われる。現在トップのポルシェ、それを10ポイント差で追うトヨタ。マニュファクチャラーズチャンピオンシップを狙う両者のプライドをかけた白熱のバトルが繰り広げられることは間違いない。