【甲子園熱戦レポート│9日目】スケールは髙橋宏斗クラス? 中京大中京の2年生右腕・宮内のこれからに期待<SLUGGER>
一方で、課題も残した。1点ビハインドで迎えた9回表だ。先頭の入来田華月に対して、初球のフォークがボールになった後、ストレートを投じたがこれが142キロとやや精度を欠いた。すると、入来田に完璧に捉えられてスタンドに放り込まれたのだった。 「アウトコース低めに投げたつもりだったんですけど、ボールが浮いて中に入ってしまった。打った瞬間、(ホームランは)いったかなと思いました。しっかり投げ切らないといけなかった」 これほどのポテンシャルがある宮内が信頼を勝ち得てこれなかったのは、こうしたピッチングをしてしまうからだろう。 高橋監督は話す。 「宮内は良かった部分と一球一球の精度というものがまだまだばらつきが大きい。それが彼とって課題。得点を与えない、粘り強くマウンドを降りない投手になってほしいですね。 スタミナ面もそうですし、甲子園で投げるといのはそんなに甘いものではありません。宮内自身の取り組みも含めて甲子園にマウンドに立つ覚悟を持って今日の1球が自覚になってくれればと思います。彼自身がやっぱり変わっていくときべきとこだと思います」 ただ1年を過ごすだけで成長できるほど高校野球は甘くない。高校でトップになるような投手はそれ相応の努力をしている。あと1年でどれだけ自分を追い込み、成長できるかだろう。高橋監督が言葉に力を込めていたのが印象的だった。 宮内は話す。 「森や石垣を越えて世代を代表するピッチャーになりたい。春、夏と甲子園に戻ってきて日本一になりたい」 好投手は1球に笑い、1球に泣くとよく言ったものだ。 勝負どころでいかに間違いのない球を投げ込むことができるかは、宮内がその取り組みによって得ていくものだろうか。好投手への道筋は「この1球」がベストボールになるか、失投になるかの差だ。 スケールは十分。 この1年でどこまで精度を高められるか。高橋宏斗のような、ややもすると、それ以上の存在にもなれそうな宮内に期待したい。 取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト) 【著者プロフィール】 うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
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