「別荘使用」と「定住目的」それぞれの言い分に翻弄…いま「リゾートマンション」で起こっている、新たなトラブル
格差が「衡平」な必要がある
これに対し、マンション管理に詳しい東池袋法律事務所の根本達矢弁護士によると、結論として定住を禁じたり、管理費を多めに徴収することは難しそうです。 「まず、前提として、マンションのルールとして定住禁止を定めたり、管理費・修繕積立金の金額を定める場合、いわゆるマンション管理規約によって各マンションが独自にルールを定めることになります。 これは、マンション管理においては法令によって事細かく規制を行うのではなく、各マンションの実情に応じて臨機応変に規定を定めることを期待するものであり、これを「規約自治の原則」といいます。 もっとも、この原則のもとでも、全く自由に内容を定めることができるわけではなく、「区分所有者間の利害の衡平」が図られるように定めなければならないとされています(区分所有法30条3項)。すなわち、区分所有者の間で明らかに衡平とは言い難い差異を設けることはできません。 そして、ここでの「衡平」とは、マンションの専有部分・共有部分・敷地・附属施設についての形状、面積、位置関係、使用目的、利用状況、各区分所有者の支払った対価といった事情を総合的に考慮して判断するものとされています。 そのため、例えば専有部分の床面積割合と無関係に個人所有か法人所有かで管理費等の負担に格差を設けたような条項は、無効となり認められない可能性があります。 ご質問のように、定住者とそうでない者との間で、管理費・修繕積立金・駐車場使用料の金額に格差を設けるためには、その格差が「衡平」なものである必要があります。 しかし「衡平」と言えるためには先に述べたように床面積や形状、位置関係といった事情も考慮されるため、定住者とそうでない者の格差を大きく設けることは現実的には難しいと思われます」 専有部分の使用目的が居住用か事業用かのみによって管理費の額に差異を設けた事例では、そのことを定めた管理規約の当該条項は無効とされており(東京地方裁判所平成27年12月17日)、ご質問のように定住者のみに対して駐車場使用料を課すような規定は、無効とされる可能性が高いと思われます。 いっぽう、マンション全体を定住禁止にすることについては、区分所有者間で差異を設けるものではないので規約変更により可能かと思われます。 ただし、その変更が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼす場合、その者の同意が必要となります(区分所有法31条1項)。もともと定住を可としていたマンションにおいて管理規約を変更して定住禁止とすることは、定住者にとって特別の影響を及ぼすと判断されるおそれが大きく、規約改正には当該定住者の同意が必要となると思われます」(根本達矢弁護士) 消防設備点検や雑排水管清掃の実施率は、一般のマンションでは70%~80%で、投資用のマンションは、20%~30%ですが私は今回訪問したリゾートマンションは、10%程度と思いきや、意外にも92%という高い数字でした。 管理会社に理由を伺ったところ、このマンションでは、管理員が不在組合員から住戸の鍵を預かっているのと定住者は通勤をしていなので在宅が多く実施率が高いとのことでした。 昭和の時代に企業で成功した者の証だったリゾートマンションも、令和の時代にはつわものどもが夢の跡、「羨ましい」という気持ちが湧いてくることはないかもしれません。
松本 洋(マンション管理士)