【性教育が足りない現実】妊娠を冷やかす子どもたち
これから羽ばたいてゆく女の子たちが、「女の子に生まれなければよかった」と思わずに、「自分でよかった」と思いながら暮らせますように。 そんな願いがこめられた書籍が発刊された。それが、『女の子に生まれたこと、後悔してほしくないから』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)だ。 著者の犬山紙子氏は、娘を妊娠したことをきっかけに、現代社会の女性が抱えるさまざまな問題に向き合いはじめた。母娘関係、性教育、ジェンダー、SNSとの付き合い方、外見コンプレックス、いじめ、ダイエットなど、女の子を育てる時期に生まれる無限の「どうしよう」を起点に、10人の専門家取材を重ね、本書を書き上げた。 今回『女の子に生まれたこと、後悔してほしくないから』の発刊を記念して、犬山氏にインタビューを行った。聞き手は、子ども向けに「自分の身を守る方法」を網羅的に紹介した児童書『いのちをまもる図鑑』の著者、滝乃みわこ氏。 (構成/ダイヤモンド社・金井弓子) ● 無知が誤解を生む 滝乃みわこ(以下、滝乃):犬山さんは『女の子に生まれたこと、後悔してほしくないから』の中で子どもへの性教育の重要性を書いていますが、改めて、なぜ重要だと考えますか? 犬山紙子(以下、犬山):無知が価値観を歪めてしまうからです。妊婦さんに対して「エッチなことしたんだ!」と冷やかす子どもを見たことがありますが、あれは完全に無知が原因だと思います。性教育は体の仕組みだけでなく、相手の体や自分の体を尊重することを学ぶものだからです。そこを理解していれば、そんなことはしなくなるはずです。 滝乃:性教育よりも先に歪んだ情報に触れてしまうことで、「性=いやらしいもの」と思い込んでしまうんですよね。その結果、変な反応や誤解が生まれる。 ● 男の子への性教育を軽視してはいけない 滝乃:本当は男の子にももっとちゃんとした性教育をしたほうがいいですよね。 犬山:まさにその通りです。男の子にも「妊娠のリスク」や「同意の大切さ」などをしっかり伝えることが必要だと思います。それは傷つく可能性があるのは男の子も同じだからですし、妊娠や性病の怖さや責任についても理解してもらうべきですよね。 ● 性教育の入り口は、さりげない方がいい 滝乃:性教育の本って、いろいろ出ていますよね。お子さんとは一緒に読んだりしていますか? 犬山:子どもの本棚に何冊か置いています。新しい本を買ってきたら、テーブルの上にさらっと置いておくんです。そうすると興味を持って勝手に読んでくれるんですよ。性教育の本もいくつか読んでくれています。 滝乃:いいですね。「読みなさい」って言うと逆に読まないことが多いですし、自然に触れられるのはいい方法ですね。 犬山:そうなんです。子どもが主体的に「知りたい」と思ったときの方が、その知識がしっかり生きると思っているので。幸い、うちの子は本が好きなので助かっています。でも、本が好きじゃない子の場合は、アニメや動画など別の方法を使えばいいと思いますね。 ● 書籍は強い味方 滝乃:最近は『子どもを守る言葉「同意」って何?』など、「同意」をテーマにした子ども向けの本もありますよね。すごくわかりやすくていいと思います。 犬山:そうですね。『10代から知っておきたい あなたを閉じこめる「ずるい言葉」』とか『こども六法』なんかもよい本だと思います。うちの子も読んでいます。 滝乃:『こども六法』を読んでいるなんてすごいですね! 犬山:娘の友達が「罰金刑と懲役刑が~」「それは執行猶予が~」とか、急に法律に詳しい話をしていて「え、どこで覚えたの?」って聞くと、「こども六法で読んだ」って、それを聞いて娘の興味が出たようで、机の上に置いておいたら読んでいました。 滝乃:面白いですね!でも、それって興味を持つタイミングが大事なんですね。 犬山:興味を持ったときにどれだけ刺さるかが重要なのかもしれません。うちの子も読んでいますが、どこまでちゃんと理解しているかはわかりません。それでも「興味を持ったときに学べばいい」と思って、無理に押しつけずに与えています。 ※本稿は『女の子に生まれたこと、後悔してほしくないから』に関する書き下ろし対談記事です。
犬山紙子/滝乃みわこ