【365万人が仕事と介護を両立する時代】もはや誰もが当事者に 介護離職以外の選択肢を増やせ
仕事の属人化をなくし働きやすい職場づくりを
仕事の属人化をなくすことについて、前出の池田さんは「仕事は、(1)自分にしかできないこと、(2)人に任せられること、(3)する必要がないことの3種類に分けることができる。(1)は可能な限り休まない、(2)は他の従業員にカバーしてもらう、(3)は行わないというメリハリをつける。これにより、介護だけでなく育児や自己啓発など他の事情でも休みやすくなり、会社全体の働きやすさにもつながるのではないか」と話す。 一方で、従業員側は「介護がもたらすキャリアへの影響」を考え、企業側は「介護はプライベートな事情」という〝本音〟があるのも事実だろう。しかし、その認識こそ、介護離職の要因の一つにもなっている。「従業員が介護を申告しない『隠れ介護』も問題だ」と池田さんは話す。「今はプライベートに踏み込まないことが良しとされているが、従業員が働けなくなることは企業業績に直結する労働問題だ。従業員がリスクの共有を可能にするためには、普段の相談環境や、個人を尊重するような職場の空気づくりも肝になる」(同)。 大和総研政策調査部主任研究員の石橋未来さんはこのように話す。 「令和6年5月に改正された育児・介護休業法では、早い段階での従業員への両立支援制度などに関する情報提供が事業主に義務化される。男性の育休取得率が3割を超えるなど仕事と育児の両立支援制度の活用が広がってきたように、仕事と介護を両立できる環境整備も急務だろう」 介護の事情は人によってさまざまであり、実際に直面しないとその実態はわからない。仕事と介護の両立支援の周知、また、相談できる職場づくりをすることは、結果的に誰もが働きやすい職場環境の構築につながっていくのではないか。家族や本人だけではなく、企業として、社会として、この問題に真剣に向き合わなければならない。
野口千里