石浜繁子81歳「教育ママだった子育てが、間違いだったと気づいて」。64歳で保育士資格取得、今は自宅の居間を絵本文庫として開放中
64歳で保育士の資格を取り、70歳まで現役で働き続けた石浜繁子さん。夫亡き後は、子育て中の母親と子どもが気軽に集まれる場所にと、自宅に文庫を開きました。81歳となった現在も精力的に活動を続けています(構成:野田敦子 撮影:田原由紀子) 【写真】大人こそ読んでほしいと石浜さんが推薦する絵本 * * * * * * * ◆のんびり息抜きし、寛げる居場所を 2018年、76歳のときに自宅の居間を開放して、「えほんのおうちゆめのき文庫」をオープンしました。保育士を退職した6年後のこと。大がかりなことは何もしていません。本棚を買い揃え、座り心地のいい椅子を置いたぐらい。 床の間もお仏壇も、そのまんま。絵本は、保育士時代に集めた約400冊から始め、自分の貯金や寄付金で少しずつ増やし、今では2000冊ほどになりました。 開館日は、近くの図書館がお休みの毎週月曜日。主に赤ちゃんや小さなお子さんを連れたお母さんたちがやってきて、絵本を読み聞かせたり、お絵かきする子どもの横でおしゃべりしたり、気に入った絵本があれば借りて帰ったり……。 他府県からわざわざ足を運んでくださる方もいるんですよ。遠路はるばる来ていただくほどの場所じゃないんですけど、何だか居心地がいいみたい。 農家に嫁いだ娘がおいしいお米を送ってくれるから、お昼時には、ごはんを炊いて具だくさんのお味噌汁と一緒にふるまうことも。 テーブルに炊き立てのごはんを置くと、「わあ!」と歓声が上がって、一斉におむすびを握ったり、それぞれが持ち寄ったおかずを並べたりして、和気あいあいと。特別なごちそうはなくても、みんなで食べるとおいしいの。不思議ですよね。
お母さんたちも、一日中、子どもと過ごしているとストレスがたまるし、どんどん孤独になっていくでしょう。私も六十数年前、縁もゆかりもない大阪に出てきたときは相談相手がいなくて苦しかったから、その気持ちが痛いほどわかるの。だから、せめてここでは、人の温もりを感じながら、のんびりと息抜きしてほしいんです。 最初は、居間を改装して、喫茶店にすることも考えました。コーヒーを飲みながらおしゃべりできる空間なら、お母さんが買い物に行く間、お子さんを預かることもできる。でも、お店にするとお代をいただかなくちゃいけないでしょう。それは嫌だなあと。 いっそ私の大好きな絵本の文庫にして、完全無料でいつでも寛いでもらえる場所にしたらどうだろう。そう思ったら、何だかとてもワクワクしてすぐに行動に移しました。 夫が亡くなって反対する人もいなかったし、2人の娘も「お母さんの好きなようにしたらいい」と賛成してくれたから。でもね、最初は人を招くために、せめて喫茶店風にリフォームするつもりだったの。 ところが、建築家の先生に相談したら、「いやいや、このままがいい。こんな感じのところはほかにないよ」とおっしゃって。「ほんまかいな?」と思ったけれど(笑)、ご覧の通り、そのまんま始めて今に至ります。
【関連記事】
- 石浜繁子81歳「腱鞘炎になっても、勉強できて幸せだった」64歳で保育士資格取得。お母さんたちがゆっくりできる居場所をと、自宅の居間を絵本文庫に
- ヨシタケシンスケさんが『世界一受けたい授業』に出演。女きょうだいに挟まれ、引っ込み思案に。会社員時代のグチイラストが、絵本作家の道を開いて
- TikTokで300万回再生で話題『もうじきたべられるぼく』作家・はせがわゆうじ「だいたい端っこの方にいます」
- 【追悼】絵本作家・甲斐信枝さん「草花や虫たちと根気よく向き合う。利害を捨てる訓練というのは、草たちが教えてくれる」
- 1970年代の女性誌を彩った絵本作家・飯野和好「最初は『気味が悪い。こんなもの使えない』と言われ。創刊されたばかりの『アンアン』掲載を機に、特徴を活かすため絵本の世界に」