300年の歴史ある祭り、資金対策“80万円の観覧席”の満足度 20万人が見物、富山の豪商が興した「おわら風の盆」
これはまずいということで、練習場所となる公民館などに、広さに合わせて空気清浄機や衝立などを分配して練習を再開し、規模を縮小しながらも、なんとか再開にこぎつけたのが、一昨年(2022年)だった。 ■応援を力に祭り継続 橘さんは、「ありがたいことに八尾に移住してくる人たちは、おわらに魅了された人が多く、祭りに対して非常に協力的だ」というが、全体として見れば少子高齢化の流れには抗いがたく、とくに小さな町内では、祭りの担い手不足が課題になっている。
そこで、こうした人手不足・資金不足への対策として、今年から新たに始めたのが「祭り×推し活」の取り組みだ。具体的には、11町それぞれの町紋がデザインされた「応援うちわ」やオリジナル手ぬぐいを祭り会場や越中八尾観光協会のオンラインショップで販売。お客さんに自分が応援したい町のうちわを買ってもらい、踊りを見に行ってもらおうというのである。その収益は必要経費を除いて、翌年以降の祭りの運営に役立てられる。
この「推し活」の取り組みには次のような効果が期待され、実際に反響も大きいという。 「今回の取り組みは、ふるさと納税と同じように、祭り会場に来なくても応援できる仕組みであり画期的。しかも、一度、商品を開発して販売チャネルさえ構築すれば、運営側にそれほどのリソースが必要とされず、持続性も高い」(富山県の県政エグゼクティブアドバイザーを務める立教大学客員教授の永谷亜矢子さん) 「推し活グッズの販売を告知したところ、今年は祭りに行けないが、ぜひ応援したいので購入したいとの声をいただいた。中には複数の町のうちわを購入してくださるお客様もいる。祭りを応援してくれる人が大勢いることを地域の若者にも知ってもらうことで、今後、祭りに積極的に関わるきっかけになればと思う。収益化はもちろんだが、祭りの担い手不足の対策としても寄与することを期待している」(グッズの販売を担当する県職員)