ゴーストタウンから若者の聖地へ…大阪「味園ユニバース」が“ナンバの魔窟”となったワケ。映画のロケ地としての歴史も解説
映画『味園ユニバース』公開でファンが聖地巡礼に詰めかける
それでもまだ“知る人ぞ知る”コアなカルチャーゾーンだった「ユニバース」の名を、ビルごと平成の世の中に知らしめたのが、2015年の映画『味園ユニバース』だった。 監督は『リンダリンダリンダ』(2005)、『もらとりあむタマ子』(2012)の山下敦弘。主演は大人気グループの関ジャニ∞(現SUPER EIGHT)に所属していた渋谷すばる。そして、「ユニバース」を拠点とする歌謡バンド「赤犬」が実名のまま出演し、ヒロインを演じる二階堂ふみは、赤犬のマネージャーを演じた。 記憶喪失になったポチ男を演じる渋谷すばるは、ザリザリと音がするような尖った感性とむきだしにし、演技、歌声ともに、強烈な印象を残した。余談ではあるが、渋谷は2024年10月25日(金)から、Amazon Originalドラマ『龍が如く ~Beyond the Game~』に出演。武正晴監督は、起用のきっかけが『味園ユニバース』の演技であったと、インタビューにて語っている。 「特に目つきがすごくて『こんないい俳優がいるんだ』と思ったんです。年齢的にも、虎視眈々と物事を考えているような刑事役をできるのではないかと、お声がけしました」 確かに彼の「歌うことだけが大切」とし、他のことは捨ててしまったような、不思議なたたずまいは鮮烈だった。この映画がロングヒットし、ロケ地となった味園ビルには、聖地巡礼をするファンが詰めかけ、一気に賑わいを増していく。 再び全国的に認知度が上がり、アンダーグラウンド感がなくなっていく寂しさまで訴える客がいたほど。しかし、実はもうこの時には、老朽化は深刻化していた。解体計画が何度も出ては、反対意見が出て延期されていたのだった。 そして「ホテル味園」は開業から40周年、2019年に営業終了。さらに2020年に入り、新型コロナウイルスによる自粛という大打撃が味園ビルを襲い、5階の宴会場も営業が終了(無期限休業)している。