宮川花子「ごめんやけど、もし舞台でしんどくなったら、漫才の途中でもやめるよ」そのとき大助は
妻は芸人「花子」であり、同時にひとりの患者「美智代」でもある。大助の苦悩
静まり返った車の中で窓の外を眺めながら、自分が芸人ではなくて患者になったことを悟ったという花子さん。「芸人」だった自分への名残惜しさと「患者」として生きる覚悟を決めた自分へのいとおしさが入り交じったなんともいえない気持ちだったと言います。今思い出しても少し泣きそうになるとか。 「大助くんは複雑な思いをかみ締めていたに違いありません。漫才に妥協したくない、でも嫁の体は心配。そんな胸の内が痛いほど伝わってきました。じつは『明日の舞台、少しでもしんどくなったら、すぐにやめてくださいね』とアドバイスしてくれたのは、あの熱男先生でした。そう、私の姿勢を変えてくれたひとことというのが、この言葉なんです」 熱男先生とは、心臓カテーテル手術でお世話になった循環器科の上田友哉先生。どんなことにも熱心になる「ザ・熱い男」なので、花子さんが「熱男」と命名したのです。その熱男先生がフジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』の密着取材中に、きっぱりとあの言葉をかけてくれたのだそう。 「もし舞台で倒れるようなことがあったら、芸人としての花子ではなく、患者としての美智代が恥ずかしく感じるだろうと思いました。先生方をはじめ、支えてくださるすべての医療スタッフの皆さんに恥ずかしてくて顔向けできない、と」 誰もが知る人気漫才師として活躍してきた花子さん。このような心境に変化するまでには私たちが想像もできないほどの葛藤があったに違いありません。でも、すべては命があってこそ。そんな大切なことを私たちに改めて教えてくれているような気がします。続く【後編】では、そんな花子さんの心境の変化に対する世間の反応や芸人としての底力、大助さんとの感動秘話などをお伝えします。
漫才師 宮川大助・花子