国産飛行機の実力は?海軍”最強”戦闘機『紫電改』その歴史的価値~ライト兄弟から121年
万単位の手作業に技術レベルの高さ
日本で唯一、見ることのできる紫電改の実機は1978年、足摺宇和海国立公園の久良湾海底で偶然見つかり、引き揚げられた。半世紀近くが経過し、「骨組みの腐食が進み、外板が劣化している」(調査スタッフ)という。 時間の経過との闘いでもある修復、保存へ向けた調査の中で、当時の技術力の高さに驚いたと調査スタッフが目を輝かせた場面があった。 「リベットの打ち方、その手作業の一つひとつに当時の技術レベルの高さを感じます」「その作業の数は、もしかすると万(単位)いくかもしれない」(調査スタッフ)。 リベットといわれて最初、ピンとこなかったが、機体をよく見ると丸いボツボツがたくさんある。飛行機は気圧の変化など過酷な状況に長時間さらされるため、強度の高い接合方法が求められるそうだ。リベット接合は溶接よりも強く、ボルトのように緩みも出ないため飛行機には適しているという。説明によると、リベットは手作業で行われるが、絶妙な強さ(加減)で打たないと、接合される外板の方が薄く伸びてしまって、強度が失われるという。 「数ミリ単位の(細かさが要求される)手作業」(調査スタッフ)だ。
紫電改はライト兄弟から始まった飛行機の歴史の1つの段階
あるベテラン調査スタッフに質問すると話が止まらなくなった。紫電改への愛情を感じた。 「自動空戦フラップ」について質問した時で、この技術が革新的なのは、日本のパイロットの実戦での経験とスキルを”自動化”した点にある。 ゼロ戦の熟練パイロットが本来、離着陸などに使うフラップを、空戦時に速度を落としながら旋回する際に使い、高い運動性能を発揮していた。この実戦から生まれたマニュアル的な操縦技術を自動化し、練度が低いパイロットとベテランとの差を埋めようとしたのが自動空戦フラップだ。 必死で仕組みを理解しようとしたが、どうやら微分とか物理の知識が必要のようで、私には理解不能だった。 ただ、「今の航空機の自動操縦のはしりといっていい」(ベテラン調査スタッフ)という言葉が心に残った。当時の開発者は敗色が濃厚になり、食うや食わずの生活を強いられる中、技術を進歩させる熱意を持ち続けていたのだ。 (展示館の自動空戦フラップの説明文では「水銀とチェックボールによる液体圧力に電位差を微分した値を計測、駆動系に情報電位を搬送するシステム」とある) ちなみに「紫電改のベテランパイロットの中には、自動空戦フラップを意図的に使わなかった隊員もいたらしい。スイッチでオンオフの切り替えが可能だった」(展示館関係者)という。