AI自動買取機も活躍…「中古スマホ」販売台数、過去最高の要因
中古スマートフォン市場が伸びている。MM総研(東京都港区)によると、2023年度の中古スマホの販売台数は前年度比16・6%増の272万台と過去最高を記録した。新品スマホの価格上昇などが背景にあると分析する。中古スマホ市場の拡大は、再利用の観点から環境への配慮にもつながる。市場活性化のためには、使わなくなった「眠るスマホ」をいかに市場に流通させるかが課題となり、消費者の意識改革も必要になりそうだ。(阿部未沙子) 【写真】AIスマホ自動買取機 MM総研の原健輔研究主任は「コロナ禍で仕事や個人といった用途別にスマホを使う場面が増え、安価な中古スマホを購入する人が増えた」と中古スマホの販売台数が増えた理由を分析する。さらに、MM総研によると中古スマホの販売台数は28年度にも23年度比60・6%増の438万台になる見通し。個人と法人問わず需要が伸びると予想する。 中古携帯端末販売の業界団体であるリユースモバイル・ジャパン(RMJ、東京都千代田区)の調査でも中古スマホ市場の活況がうかがえる。RMJの会員企業による24年1―3月の買い取り金額は、前年同期比約50%増になったという。 リユースモバイル・ジャパンの有馬知英理事長は中古スマホ市場の伸びを「端末の行き過ぎた値引きが抑制されて、新品の端末が適正な価格で販売されるようになった」点が要因の一つと指摘する。 中古スマホの安全利用を狙いとしRMJでは指針を策定。7月には二酸化炭素(CO2)削減への取り組みを新たに盛り込んだ第3版を発行した。ただ、足元では「使用済みの端末を再利用するチャンスが失われている状況」(有馬理事長)と課題を把握する。 「眠るスマホ」の流通に貢献し、課題解決に取り組む企業の1社が中古スマホの買い取りを手がける愛回収ジャパン(東京都港区)だ。 愛回収ジャパンは人工知能(AI)を用いてスマホの査定を行う「AIスマホ自動買取機」を手がける。買い取り機ではスマホの内部と外観を検査し買い取り金額を査定した後、回収する。査定から手続きまでは約10分で完了するという。 日本では買い取り専門店や商業施設などに約25台を設置している。買い取り機は米アップルのアイフォーンを対象としており、新製品の発売と同時期に台数が伸びる傾向にあるようだ。張棟棟社長は「23年12月は同じ年の8月と比べて(月間の買い取り台数が)約40倍になった」と振り返る。 新製品の発売が中古スマホの流通量を押し上げる好循環になっているものの、課題は残る。例えば消費者の意識だ。張社長は「中古という言葉に抵抗感を持つ人もいる」と指摘する。またネットワーク利用制限により、第三者が中古スマホを買った際に端末利用ができなくなる懸念を踏まえ「中古スマホの購入者に不利益が生まれる」(有馬RMJ理事長)との声もある。 中古スマホを売買するための環境を整えながら、一方で購入時の不安の払拭につながるような仕組みづくりも求められている。