50代夫婦です。2人の子どもはすでに18歳を過ぎ、独立しています。遺族厚生年金が見直されているそうですが、法律が成立した場合、具体的にどう変わるのでしょうか?
2024年7月、厚生労働省が審議会に遺族厚生年金の見直し案を示しました。現行の遺族厚生年金と、見直し案ではどのような点が異なるのでしょうか? 本稿で見ていきましょう。 ▼年金「月15万円」を受け取っていた夫が死亡。妻は「遺族年金」をいくら受け取れる?
遺族基礎年金は変わらない
国の遺族年金には遺族厚生年金のほかに、もう一つ、遺族基礎年金という制度があります。遺族基礎年金については、変更はありません。なお、遺族厚生年金を含む社会保障制度における「夫婦」とは事実婚が含まれるため、記事内の配偶者は事実婚の配偶者を含みます。 また、遺族厚生年金や遺族基礎年金における子とは「18歳になった後の最初の3月31日を迎えるまでの子(子に障害のある場合は20歳まで)」を意味します。これらの定義も、変更はありません。
現在、遺族厚生年金を受け取れるのは?
今般の遺族厚生年金の見直し案で、対象になったのは「子のいない夫婦」です。では、「子のいない夫婦」は、どのようなときに遺族厚生年金を受け取ることができるのかについて、現行の制度を見ていきます。これは、男女で異なります。 まずは、女性から解説します。配偶者を亡くしたとき、女性が30歳以上の場合、遺族厚生年金を生涯にわたって受け取ることができます。配偶者を亡くした時点で30歳未満の場合、遺族厚生年金は5年間だけ受け取れます。 続いて男性です。配偶者を亡くした時点で男性の年齢が55歳以上の場合に、遺族厚生年金を「受け取る権利」が生じます。実際に受け取れるのは、60歳になってからです。なお、55歳未満の男性は遺族厚生年金を受け取ることができません。
「子のいない夫婦」の遺族厚生年金の見直し案
先述の「子のいない夫婦」のうち、配偶者を亡くした時点で30歳未満の女性は、「遺族厚生年金は5年間だけ受け取れる」と書きました。この定義を「配偶者を亡くした時点で、20~50代の男女」に当てはめようというのが、今般の見直し案です。 つまり、「配偶者を亡くした時点で20~50代の者は、遺族厚生年金を5年間だけ受け取れる」というように見直されるのです。なお、女性については、時間をかけて段階的に見直し案に移行することになっています。 また、すでに遺族厚生年金を受け取っている方や、「子のいる夫婦」については、今般の見直しの対象になっていません。