急失速! "賛否両論の名将"黒田監督が率いるFC町田ゼルビアで何が起きているのか?
そうしたサッカーの本質とはズレた問題が、町田の戦いにどれほど影響したかはわからない。だが今季、鹿島から加入した元日本代表DF昌子 源は、批判はむしろ糧になったという。 「シーズン当初から風当たりは強かったですから。もちろん、選手が叩かれることもあるし、それで落ちようと思ったら簡単。でも、そういう声に負けず、何か言ってくる人が応援しているチームよりも上位に行くという思いに変えてやってきました」 青森山田出身で、高校時代から黒田監督を知るMFバスケス バイロンは、現在のチーム状況についてこう話す。 「経験ある選手もいますが、町田の大半の選手はJ1の優勝経験がない。約3ヵ月間、首位にいましたけど、(夏以降の失速は)もしかしたらそういう経験不足が出たのかもしれない。 首位に立っても浮かれることはなかったし、むしろ他チームのやる気に火をつけてしまったのかも。どこもJ1初昇格のチームに優勝させたくはないでしょうから」 黒田監督の様子も気になるが、バイロンの目にはどう映っているのか。 「ずっと一緒で変わらない。ちょいちょいネットで炎上しているのは見ますけど(苦笑)。サッカーはいくら一生懸命やっても必ず勝てるとは限らない。それでも、勝っても負けてもブレない監督の姿勢はスゴいと思います」 シーズン前半を首位で折り返し、夏にはパリ五輪代表のFW平河 悠が海外移籍したものの、DF杉岡大暉、FW相馬勇紀、MF白崎凌兵、DF中山雄太ら経験ある選手を加え、チームを強化。だが、攻撃面で平河の抜けた穴は想像以上に大きく、新加入選手が思いどおりにフィットできていないことは誤算だったかもしれない。 そして、町田の強みだった守備コンセプトの不徹底が顕著に見えたのが、首位を明け渡した29節の浦和戦(△2-2)だった。 それまで町田はシーズンを通し、サイドからのクロスで直接失点したことがなかったが、87分、左サイドからのシンプルなクロスをチアゴ・サンタナに頭で決められた。チアゴ・サンタナはいずれも夏に加入した杉岡と中山の間を割ってゴール前に侵入していた。 黒田監督も、この浦和戦は夏以降うまく噛み合っていない町田の戦いぶりを象徴する試合のひとつに挙げており、シーズン前半と後半の戦いぶりの違いについて、こう触れている。 「夏に抜けた選手、新たに入った選手がいて、そこをうまく修正しきれていない。町田のコンセプトが徹底できず、コンセプトから逸脱したプレーも見えた。(途中加入の選手も多く)準備の難しさを感じています。 もちろん、相手との対戦も2巡目に入り、こちらの戦い方が研究されるなど、そのあたりの対応はさすがJ1だと痛感しています」 自慢の守備が耐えきれず、攻撃面でも相手に対策を講じられて点が取れず、勝ち点を思うように上積みできていないのが町田の現状だ。