【試乗速報】ホンダ新型CBR1000RR-R「マイチェンの域を超えている!! 従来と同じ218馬力なのに、20馬力アップしたような力強さ」
2モーター式スロットルバイワイヤが恐るべき効果を発揮する
MotoGPでもお馴染みのポルティマオサーキットはジェットコースターのように激しい高速サーキットで、私もこのコースのことはよく知っている。私はここで2017年型ファイアブレードを走らせたし、最近ではドゥカティ パニガーレV4Sも走らせた。2023年型ファイアブレードの走行体験も豊富に持っている。 また、私は事前取材を行い、ホンダによる長く有益な技術解説を聞き、ホンダのエンジニアやマン島TTのレジェンドライダーであるジョン・マクギネスとも話をした。それにもかかわらず、新型CBR1000RR-RファイアブレードSPは私の想像を軽く超える走行性能を有していたのだ。 まずエンジンだ。スペックでは従来型と同じ数値=218psなのだが、新型は20psもパワーアップしたのではないかと思うほど力強く走る。この駆動力は絶大だ。ホームストレートで300km/hギリギリ手前でギヤを5速に入れても、新型CBR1000RR-RファイアブレードSPは地平線に向かって爆走し続けていた。ホンダはこの999cc並列4気筒が市販車で最も強力なエンジンだと主張しているが、それに疑う余地はない。従来型も速いバイクだったが、新型はさらに上のレベルの速さなのだ。 しかも、このエンジンはただパワーアップしただけではなく、スロットルレスポンスの正確さと滑らかさは、あなたにWSBKライダーの気分をたっぷりと味わわせてくれるはずだ(しかもスプリットスロットルボディが発するサウンドとアクラポビッチの排気音には中毒性があるほどだ)。 4個のバタフライバルブがすべて開いたときでも唐突な挙動はない。すべてがスムーズで、実にホンダらしい仕上がりだ。 とくにスロットルの開け始めの挙動が素晴らしい。エンジン出力を「P1」にセットすると、スロットルレスポンスが鋭敏でトルクも強大だが、アグレッシブすぎると感じることはない。フルバンク中にスロットルを全閉状態から開けていくときリヤタイヤに負荷をかけすぎず、電子制御も作動させることなく加速したいと思うものだが、スプリットスロットルの効果によってリヤタイヤには適切な駆動力がかかる。そのおかげで周回を重ねるたび、コーナーの立ち上がりが速くなった。 そんなふうにして、218psという容赦のないパワーがスムーズかつ正確に絞り出されていると、ポルティマオサーキットでは少し不思議な、変わった感覚に見舞われる。私の拳はまるで鉄のようだが、ピアニストのような繊細なタッチで動くのだ。 数えきれないほどのレースバイクが同じくらいのパワーを持っているが、低速域やスロットルをわずかに開いたときの挙動には唐突さがあったりして扱いにくい。一方、ユーザーフレンドリーなバイクはトップエンドまで回しても興奮を感じられない。しかし新型CBR1000RR-RファイアブレードSPはラップレコードを更新する走行性能を持ちながら、走行中に怖さを感じさせないフレンドリーさを兼ね備えている。 シャシーの変更は劇的なものではないが、エンジンの改良と同じくらい印象的だ。新開発のオーリンズ製スマートEC3.0サスペンションは、コンプレッションとリバウンドを電子制御するセミアクティブモード(Aモード:「トラック」、「スポーツ」、「レイン」の3種)、またはダンピングをアクティブにしない固定モード(Mモード:M1、M2、M3の3種にそれぞれ自由に設定可能)がある。 Aモードではフロント、リヤ、ブレーキ、加速、コーナリングからなる設定値を微調整することが可能だ。Mモードでは、コンプレッション(圧側)とリバウンド(伸び側)を前後それぞれに5%ずつ調整でき、好みのセットを3種保存しておくことができる。 プリロードを調整するには手動で工具を使う必要があるが、一般的なサスペンションよりもはるかに容易、かつ迅速に行える。 ピレリ製スリックタイヤを装着して走行した最初のセッションでは、スマートEC3.0をAモード・スポーツを選択し、走行中にトラックへ切り替えた。近年のセミアクティブサスペンションの進歩は目覚ましく、電子制御式なのか機械式なのか、ちょっと走らせただけでは判断しにくい。電子制御式の弱点はロードインフォメーションを感じにくいことにある。しかしスマートEC3.0はコントロール性も応答性も良く、ポルティマオのように高速コーナーと低速コーナーが入り交じるクレイジーなコースであっても何ら問題がない。 2回目の走行では自分の体重を入力すると液晶メーターに表示される推奨プリロード値に設定した。標準設定は75kgだったが、80kgへと変更したのだ。わずか5kgの変更だが、これが大きな違いを生む。最初の走行よりもずっと走りやすい。オーリンズEC3.0の高性能を否が応でも感じざるを得ない。