前年比1.4倍に大幅増の「いじめ重大事態」 調査する校長にも大きな心身への負担 「今でも涙が出る…」 医療機関にも通院 弁護士を自費で雇おうともしたが… 【いじめ予防100のアイデア・第17回】
■教育委員会が弁護士など第三者に助けを求められないのは… 専門家は、費用の大きさから自治体が第三者委員会による調査をためらう現状があると解説します。 多数のいじめ調査を経験してきた森田智博弁護士 「第三者委員会の委員には報酬を支払わなければなりません。例えば弁護士だと日当形式で支払われることがあり、通常、1日1万1000円~1万2000円です。ところが、報告書を書くとなると60ページとか100ページを超える場合もあります。それをほぼ弁護士が負担するとなると、少なく見積もっても50時間から100時間かかります。でも会議への出席が15回なら約15万円の報酬しか払われませんから、かなり“手弁当の仕事”になります。なので、それを解消するために1時間当たり1万5000円~2万円は出してくださいという交渉をしている弁護士会が多いと思います。ところが自治体からすれば、一つの第三者委員会が立ち上がって100万円規模の予算がかかると、ちょっと用意できませんよね。そうなると学校現場の人にやらせようっていう話になりがちだと思います。国は自治体任せだなと思いますね。国が自治体にお金も用意しろと言うのは、かなり厳しいと思います。校長先生から見れば、なんで自治体が予算を用意してくれないんだってなるだろうし、自治体からすれば国がどうにかしてくれないかなと思うでしょう」 国は、自治体任せにせず、予算を確保して対応すべきだと強調しました。 この点について文部科学省児童生徒課の仲村健二生徒指導室長に聞くと、「そうした声もあるが現在の法律では自治体予算で取り組んでもらうしかない。自治体によっては、補正予算を組んで第三者委員会による調査を行うところもある。常時、第三者的なメンバーを用意している自治体もある。財政基盤の違いもあって自治体により対応の格差があるのだろう」とコメントしています。 ■重大事態の調査は大変 だからこそ重大化しないように… 森田弁護士は、そもそも重大事態が起こらないようにするために本来は予算をかけるべきだとも主張します。
多数のいじめ調査を経験した森田智博弁護士 「何事も早めであれば、簡単な調査で済むじゃないですか。だから早めに、いじめが学校で発見されたときに、早めに調査しちゃって、深刻化しないようにということは大事ですね。多くのいじめ重大事態報告書を読むと、もう何年にもわたっていじめが繰り広げられ、繰り返されていて、いじめの芽が、ずいぶん前にあったと書かれている。早く調査をしていれば、そんな壮大な報告書は不要だったわけで、どう早期にアプローチするかっていうのが大事です。なので、調査よりもやっぱり予防にどれだけ力を入れるかってことが重要になってくると思います」 増え続けるいじめ重大事態。課題は山積しています。
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