前年比1.4倍に大幅増の「いじめ重大事態」 調査する校長にも大きな心身への負担 「今でも涙が出る…」 医療機関にも通院 弁護士を自費で雇おうともしたが… 【いじめ予防100のアイデア・第17回】
校長の残業は過労死ラインをはるかに超えて、月180時間になる時も。土日も対応に当たり、心身に不調をきたしました。 ■約3年かけた調査報告書づくりでも納得が得られず…心身に不調が 校長「報告書作りには約3年かかりました。調査を始め、それをもとに何度も聞き取りをして、聞き取ったものを教育委員会に報告して、齟齬がないかを確認して…。本当に大変でした。被害者とされる保護者と加害者とされる保護者の双方が納得するような結論には、どうしても至らなかった。それでも報告書として、校長が最終的にはまとめなければならないのです。学校長の仕事はもちろんそれだけではなく、その他にも、不登校気味の子どものケア、そして教員たちも守らなければいけません。私自身を守ってくれるのは、一体どこにあるのかなって思ったときに、やはりこれはもう早急に自分がちゃんと自分のメンタルを立て直さないとたくさんの人たちに迷惑をかけてしまう。たくさんの人に心配をかけてしまう。それは避けたいことだったので、医療機関に行って服薬をしながら、その対応をしていました」 文部科学省が8月に改訂した「いじめ重大調査のガイドライン」には、不登校による重大事態の場合、原則、「学校主体で」とありますが、 ▼被害者と加害者の主張が異なるケースや ▼保護者の不信感が強いケースなどは 学校以外の専門家(弁護士など)が加わる「第三者委員会」方式で調査するべきだとされています。 校長は自治体に対し、第三者委員会による調査を求めましたが、断られました。 ■自費で弁護士を雇うことまで提案したが… そこで最終的には自費で弁護士を雇うことまで提案しましたが、それも断られたと言います。 校長「自分の身を守る意味でも本当に精神的に本当にもう崩れかけていたので学校経営ができなくなるよりかは、自分が個人的にこういった学校問題に卓越した弁護士の方をお願いして、その方に介入していただいて、着地点を見出そうと考えたのです。教育委員会に何度言っても、“調査の主体は学校だ”と返されていたので。学校の管理下で起きたことなので、私、校長の責任として、自費で弁護士を雇いたいという提案でしたが、“それはできない”と言われました。“逃げ”かもしれませんけど、自分のメンタルを正常に戻したかったのです」
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