前年比1.4倍に大幅増の「いじめ重大事態」 調査する校長にも大きな心身への負担 「今でも涙が出る…」 医療機関にも通院 弁護士を自費で雇おうともしたが… 【いじめ予防100のアイデア・第17回】
増え続ける「いじめ重大事態」。被害児童が不登校になった重大事態の場合は、原則、学校が調査を担うことになっています。都内の公立小学校に勤める校長は、4年前、この「いじめ重大事態」に直面しました。教員の認識の甘さや情報共有の問題などで深刻化してしまったといういじめ。大きな心の傷を受けた児童への申し訳なさや責任を感じています。一方、加害者と被害者の間に立っての3年にわたる調査で、校長自身も疲弊したと語りました。 【写真を見る】「今でもこうやって話をしてると実は涙が出るんですよ」と語る校長 校長「今でもこうやって話をしてると実は涙が出るんですよ」 「いじめの重大事態」とは、いじめにより、子どもの生命や心身・財産に重大な被害が生じたり、長期の欠席を余儀なくされたりした疑いのあるケースを指します。 10月31日に、文部科学省が公表した2023年度の「いじめの重大事態」は、1306件と前年比1.4倍で大幅に増加。過去最多を更新しました。この国では年間を通じて、1日に約3.6件のペースで、いじめの重大事態が新たに“発覚”しているのです。 *第1号「いじめにより生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき」 第2号「いじめにより相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき」 ■加害者と被害者の言い分が真っ向から対立…難航する調査 いじめが発覚したのは、不登校になった児童の保護者からの訴えでした。校長は、自治体の教育委員会からの指示で、いじめ重大事態として調査を始めたものの、いじめの内容や、不登校に至った原因などで、加害者側と被害者側、当事者たちの言い分が真っ向から対立しました。 校長「『校長先生は被害者の味方なんですか?』『私たちの味方ではないんですか?』。加害者側と被害者側の両方の意見を聞きながら、どうやって着地点を見いだしていくのか。今、そうでなくても学校の教職員はかなり過重な負担を強いられています。いじめ重大事態となり、しかも調査は学校が主体でとなると、さらに大変です。私たちは法律の専門家ではありません。着地点をどこに見出すのか。被害者とされているお子さん、加害者とされているお子さんがいて、それでも学校生活は続きます。調査は誰がマネジメントするのか。誰が着地点を見出すのか。すごく課題は大きいと思っています」
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