「認知症」と「脳」のプロが、いま「早口ことば」に注目する”意外なワケ”…!
早口ことば、継続すると副産物も手に入る
毎日数分、早口ことばのための時間を作るとはっきり話せるようになる。だったら散歩の時に鼻歌のように早口ことばを唱えるのはどうだろう。掃除しながら早口ことば、お風呂でも早口ことば。こうして何度も言うと九九のように早く滑らかに言えるようになるはずだ。 福山記憶の話を少ししましょう。記憶は、対象物を記銘(coding)、保存(storing)、想起(retrieval)の3つのプロセスが関与すると言われています。そして、記憶を蓄える保存の機能は、左側頭葉の前方が主に担っていると考えられています。加齢とともに、左側頭葉前部が萎縮して(痩せて)記憶の保存が悪くなるということですね。そしてこのプロセスを強制的に使うと、ことばが出てくることをスムーズにすると推測されます。つまり、発語に伴い言語野の左前頭部を強制的に使う早口ことばは、この記憶プロセスも強制的に使われ、慣れるにしたがってスムーズな言語の想起ができるようになると推測されます。 訓練には前頭葉の参画が必要で、前頭葉の訓練にも役立つものと思われます。 佐藤言いにくいことばにチャレンジする、長いことばを一息で言うなど、少しずつステップアップしていくと、より効果があると思います。ラジオ体操と同じように、早口ことばを朝のルーティンに取り入れるのも良いかもしれません。私の朗読教室では、蚊の鳴くような声で読んでいたご婦人が、百人のお客さんを前に自信を持って太宰 治を読み上げました。作品を選び、歴史背景を調べ、辞書を引き、現場に出かけ、精力的に準備した結果です。早口ことばを入り口に生き方が変わる人もいます。 努力しないとできない早口ことばをやることで、記憶のプロセスも磨かれる、物忘れの改善にも役立つと言うことだ。何度も繰り返して早口ことばを覚え、ただただ高速で唱えても期待する効果は表れない。少し難しいことをやるのが良さそうだ。
佐藤 映湖