【4次元空間は誰にでも見えます!】高次元を見るための入口「4次元空間」の考え方と高次元視力を鍛える「トポロジー的準備運動」
4次元空間にはたくさんの3次元空間が存在する
また、図2では、3次元空間 R3は1個しか描きませんでしたが、図3のようにたくさんの3次元空間を描いてもかまいません。当然、各時刻に3次元空間R3があるので無限個あるわけですが、無限個は描けません。 図4でのひとつひとつは、それぞれの時間における3次元空間を表していると考えることができます。もちろん、4次元空間R4の4番目の数字は、時間ではなく、温度や湿度でもいいです。 図4では、もう1本の軸を時間と見なします。図中の3個の3次元空間は、左から昨日の正午、今日の正午、明日の正午を描いたものです。時間は連続で流れますが、ここでは3つの瞬間を取り出しています。 4次元空間R4は、3次元空間R3が、4つめの軸の方向に動き、その通った「跡」と見なせます。
4次元空間R4の中で光る点の跡は?
さて、次のことを考えてください。たて・よこ・たかさ・時間で位置が決まる4次元空間R4を考えます。 ちょうど、時刻1秒のときに点光源が光り、そのままの位置で2秒間だけ光ったとします。そして、時刻3秒にその光は消えました。これを図にすると図5のようになります。 さあ、このとき「光っていた状態」は、4次元空間R4中でどういう図形になっているでしょうか? そうです、線分になります。読者の皆様にも見えたと思います。そうです、4次元空間 R4の中の図形が見えた、ということです。
次元を1次元下げて類推すると
これの次元を1個下げた類推は以下のようになります。 たて・よこ・たかさで位置が決められる3次元空間R3の中に棒を置きます。その空間をよこ軸に垂直に切っていった断面を考えましょう。 左から切り口を順に見ていくと、最初は何もありません。ちょうど、棒の端の位置で切り口に点が現れてしばらく続きます。やがて、また点がなくなります(図6)。 このように1個次元の低い場合を類推し、逆に、そこから1つ次元を上げたものを空想するというのは、高次元を見るために大事です。 ここでひとつ注意してください。上述の、たて・よこ・たかさ・時間で決まる4次元空間の場合に説明します。今の場合、物理用語の「空間」は、時間を考えない、たて・よこ・たかさで決まる3次元空間のことです。 今の場合は、4次元空間を「4次元時空」と言います。時間と空間を合わせて「時空」です。ということは「4次元時空」は、数学でいう「空間」の一種です。空間という語の定義が2種類あるということです。 この記事で空間というと、おもに数学用語の意味での空間を指します。数学で空間というものは、もう少し広い意味で使われることもあります。 では、以降の記事で、「クラインの壺」がなぜ4次元空間の中では「自己接触しない」で作られるのかを見ていくことにしましょう。
小笠 英志(数学者)