よい姿勢は慢性痛やうつを改善、集中力や自信も向上、全身と心の健康に大きな差がつく
姿勢は気分や心の健康、社会生活にも影響
正しい姿勢は、体だけでなく、心の健康や仕事、学業、社会生活の改善にもつながる。 「よい姿勢は、集中力を保つことに役立つという研究結果があります。立っている人や座っている人よりも、横になっている人のほうが、心が迷走することが多いからです」とデオン氏は話す。 さらに、姿勢は気分やうつ状態にも関係していることが研究で示されている。「神経が圧迫されると、認知機能だけでなく、意欲まで低下します」と氏は言う。 米オハイオ州立大学の研究者で特別教授でもあるリチャード・ペティ氏は、正しい姿勢で座ったときの方が、背中が丸まった前かがみの姿勢で座るよりも「自信が持てる」ことを示した研究を共同で発表している。「よい姿勢でいることで、より自信が感じられるようになり、全体的な人生の満足度まで向上します」と氏は話す。 正しい姿勢をとれば、人との交流やつながりも改善する。「顔を上向き(あごを上げる)や下向き(あごを引く)にした人よりも、顔の角度が垂直になっている人はより協調的だと受け取られることがわかっています」とデオン氏は言う。 姿勢は、ボディランゲージにおいて重要な役割を果たしている。「そのため、よい姿勢はコミュニケーションのスキルを向上させ、日々の交流をスムーズにしうるのです」
姿勢をよくするには
正しい姿勢にはメリットがある。それを体験するためにマーティン氏がすすめているのは、日頃から座り方や立ち方を意識し、自然に感じられるまで正しい姿勢をくり返し練習することだ。 さらに、大腿四頭筋(だいたいしとうきん)、ハムストリングス(太ももの裏の筋肉)、腹筋、広背筋を鍛えることもすすめている。「体幹と脚の筋肉を鍛え、しなやかにすることで、背骨の自然なカーブを維持でき、脊椎関節が安定します」 よい姿勢には動きが重要であることから、ウィーバー氏は頻繁に立ち上がって動きまわり、好きな運動に取り組むことをすすめている。「運動で姿勢が改善され、慢性疾患やけがのリスクが減少します」 動きやすくするためにムマネニ氏がすすめているのが、昇降デスクだ。「これを使えば、一日中、コンピュータの画面の前で背中を丸めていることはなくなります」。 座っているときは、画面を目の高さまで上げて、あまり下を向かないようにする。「そして、立っているときや歩いているときは、できるだけまっすぐ前を見るようにしましょう」 デオン氏が重視するには、適切な靴を履くことだ。かかとが低く歩きやすい靴が特におすすめだという。また、背中をしっかりと支えることができ、丈夫な肘掛けのある椅子もすすめている。 テクニックはいろいろあるが、どれを選ぶにしても「よい姿勢は練習によって身につけることができます」とペティ氏は言う。
文=Daryl Austin/訳=鈴木和博