新型コロナはいかにして中国・武漢から世界に広がったのか
◇春節という最悪の時期の発生
中国政府は2019年12月末、武漢で新型コロナの流行が発生したことをWHOに報告しますが、武漢封鎖という強硬措置をとったのは2020年1月23日で、それまでに約3週間を要しました。この間に、流行は武漢だけでなく、その周辺地域や中国国内、さらには国外へと広がっていきました。これだけ急速に拡大した原因には、ウイルスの感染力が高かったことに加えて、流行の発生が、拡大にもっとも適した時期と場所で起きたからです。 まず流行発生の時期は、1月24日からの旧正月(春節)が始まる直前という、中国で人流のもっとも増える時期でした。中国では春節の時期に郷里に戻り、家族が集まって新年を迎えるという習慣があります。また、この期間は職場が休みになるので、海外旅行に出かける人も数多くいます。こうした人流の増加は春節の前から始まっており、武漢の市長も封鎖直後に、「すでに500万人が町を離れた」との声明を発しています。この中にはかなりの数の新型コロナ感染者も含まれていたはずです。その証拠に、1月13日にはタイで、15日には日本で、武漢から入国した患者が確認されています。 中国政府は、流行の発生が春節直前であることを考慮し、もっと早めに強い措置をとる必要があったのです。
◇武漢の地理的位置も悪かった
このように、新型コロナは春節という最悪の時期に発生したとともに、武漢という交通の要衝で発生したことが、流行拡大を加速させました。 この町は人口が1000万人を超える大都市で、中国の真ん中に位置し、鉄道により北京、広州、上海に約4時間で到着できるという大変便利な場所にありました。また、武漢空港からは中国国内の100都市以上、国際線は世界約60都市に航空便が就航しています。この町で感染力の強いウイルスの流行が発生すれば、瞬く間に中国国内に波及するだけでなく、国境を越えて世界各地に飛び火することは十分に予想されたのです。 この後、中国国内での流行は2月中旬をピークに全土で拡大するとともに、世界各地に飛び火したウイルスは感染力をさらに増して、西欧や中東に蔓延(まんえん)していきます。次回はその模様を解説したいと思います。 【次回は12月掲載予定】
メディカルノート