【新春インタビュー 広島・新井監督(3)】しびれる投手戦より、どんどん点を取る野球が理想
(2)からつづく ――では、チームづくりについてお尋ねします。昨年11月の「プレミア12」で小園、坂倉が侍ジャパンの一員として活躍しました。今季は2人がチームの根幹というイメージですか? 「そうなりますね。彼らはもう計算に入っている選手なので、やってもらわないといけないし、やってもらわないと困る。凄く期待しています」 ――昨季全試合に出場した小園のポジションはどうなりますか?矢野の守備力を買う形でサードを守りましたが、ドラフト1位で佐々木(青学大)が入った。佐々木との競争なのか、矢野なのか。侍ジャパンで二塁を守ったことを踏まえ、菊池との勝負なのか。 「小園は動かしたくないですね。ただ、そこは流動的になってくると思います。佐々木の(サードの)動きをまずは見て。青学大の安藤(寧則)監督に聞くと、外野もできるということなので、彼にはドラフトの時、外野も練習しておくように伝えています。キク(菊池)を休ませたり、あるいは状態が上がらない場合は、セカンドもできる。佐々木の守備位置の話になりましたが、より多くチャンスを与える観点で考えたいと思います」 ――佐々木は、どんな特長を持った打者? 「パンチ力は、青学大から同じドラフト1位でロッテに入った西川(史礁)くんより、僕は上だと思っています。プラス勝負強い。いい場面で打っているイメージがあるし、強さを感じる。打席での姿、実際に会ってしゃべっても強さを感じます。楽しみです」 ――では矢野。新井監督はまだレギュラーじゃないと言われ、本人もそう言っています。今年が勝負になる。 「1年やったらレギュラーかといえば、そうじゃない。2年、3年、プロの世界は継続していくのが難しいので。相手がいて、研究もされるので。ただ彼の場合は、守備に関して絶対的なものを持っている。そこはアドバンテージですよね。打つ方も凄く成長しましたけど、打てなかったら外さないといけなくなる。昨季の打撃面の数字は軒並み最下位。チーム打率も、本塁打数も最下位でしょ。点を取らないといけないので。昨季は守りに軸足を置きました。投手が頑張り、守ってロースコアをものにする戦い方。今季は、そこを考えないといけない」 ――今季は、守り勝つ野球とは限らない。 「限らないです」 ――理想の野球は? 「たまにはロースコアのしびれる投手戦もいいですけど、見ている人はどんどん点を取る方が面白いんじゃないですか?自分は打点を稼ぐ選手だったので、そういう野球をしたい気持ちはありますね。もちろん、理想の野球とできる野球はまた別ですけどね」 ――得点力不足解消のカギを握るのは、新外国人選手です。ファビアンとモンテロはともに26歳。従来は30歳前後の助っ人を獲得していました。方針を変えて若い選手に? 「いやいや、そんなことはないです。日本の投手のレベルが高くなっていることもあって、30発打てる長距離バッターはなかなかいない。だったら“チームに少ない右打ちで、打点を稼げる中距離バッターはいないか?”と、僕の方から編成に要望を出したんです。エルドレッド、シュールストロム、マクレーン駐米スカウトが来日している時に、渉外や編成担当を含めて何度もミーティングして。たくさんの映像を見た中で、一番良かったのがファビアン」 ――どこに魅力を感じたんですか? 「ぶんぶん振り回さない。タイミングの取り方やコンタクトするのがうまいので、日本の投手にアジャストするのが早いかな…と。凄く期待しています」 ――小園と根幹を成す坂倉ですが、昨季は大瀬良、森下とほとんどバッテリーを組んでいません。 「そこは白紙です」 ――主戦捕手の位置づけはどうなりますか? 「やっぱりサク(坂倉)が主戦でしょうね。捕手の起用に関しては、柔軟性を持って臨機応変に対応していきたいと思っています」 ――栗林が右肘を手術しました。さまざまなことが変化する中で、クローザーも競わせる形になりますか? 「競わせるというのはちょっと違うかな。彼の右肘の状態を見ながらですが、固定せず流動的になる可能性はあります。栗林は初めての手術。無理はさせられないので」 ――他の候補は? 「ハーン。黒原もそう。黒原は昨季、それぐらいのものを見せてくれましたよね。空振りが取れるし、奪三振率を見てもね。投手では彼が一番成長したんじゃないですか。何より、マインドがいい。打たれて失点し、次の打者が4番、5番でもストライクをどんどん投げられる。気持ちの強さを感じました」 ――先発陣では、床田がいち早く開幕投手に名乗りを上げました。 「開幕投手に関しても何も決めていないです。白紙です」 ――候補たちの春先の状態を見ながら? 「うーん…そういう感じですかね」 ――他球団に選手の移籍があり、戦力面にも変化がありそうです。注意する球団、気になる選手はいますか? 「いや。FAの選手を獲るなど、いろいろ動いている球団はありますけど、気にならないですね。他球団よりも自分のチーム。カープにはカープのやり方があるんでね。シーズンが始まったら相手との勝負なので、気にならないとは言えませんが、キャンプ、オープン戦までは自軍の選手が気になります」 ――ぜひ難題解決に道筋をつけ、頂点を極めてください。手腕に期待しています。 「得点力不足だったのは明らかなので、その一点だと思います。どうやったら点が取れるのか。そう思って、これまでも手を尽くしてきたつもりですが、実を結んでいない。逆転のカープといわれた、リーグ3連覇の時のような攻撃力は望めない。何度も言いますが、そこは育成していくしかないですね。新外国人のファビアン、モンテロが早い段階で日本の投手に順応してくれれば、それだけで大きな上積みがある。あとは若い選手。経験を積ませる中で成長していってくれたら。頑張りますよ」 =終わり= 【取材後記】「空気の緩み。慣れからくる舐め…が一番怖い」。印象的な言葉だ。選手は言下に否定するに違いない。監督を甘く見ているつもりなど毛頭ない…と。勝負の9月、一定の選手には、しかし、戦いの最前線で戦い抜く強さが感じられなかった。 服従させるのではなく、選手に寄り添うスタイルゆえに感じ取る「緩み」。自身の現役時代がそうだったように、新井監督は結果を恐れず立ち向かう、自発的な姿勢を求める。2季目を終え、「強い選手を育てたい」と発する意味は重い。 表情は柔和でも芯は強い。世代交代への強い意志を感じる。必要と思えば割り切り、対話した上でより厳しく接するだろう。前評判を覆してきたマネジメント力、監督発言に危機感を覚える選手の奮起、新しい力が融合した先に頂点がある。(広島担当・江尾 卓也)